米国経済はなぜ底堅いのか?成長への投資のあり方

公開日: : 大井幸子とは | 

 参院選挙が終わり、安倍内閣の新たな経済刺激策に関心が高まっている。特に「第三の矢」が中堅中小企業の成長戦略という的に当たるかどうかがキーである。

 日本には優れた技術、人材、資金がある。しかし、経済を動かすこの基本的三要素が有機的につながっていない。日銀の超緩和策でだぶついた資金があるにもかかわらず、成長の芽に有効に注がれていない。投資には当然リスクが伴うが、成長局面にある企業には一定の投資が継続して必要である。市場に資金量だけ増やしてもリスクマネーが効率的に回らない限り、成長は絵に描いた餅である。

 かつて日本の中小企業を支えたのが「短ころ」こと「短期ころがし=短期継続融資」であった。銀行の支店長には決済権限があり、地元の中小企業のオーナー経営者は、銀行から1年以内の運転資金を継続的に借り入れることができた。「短ころ」があったから頑張れたと当時を懐かしむ経営者もいるが、高度成長期には内需が高まり、経済も右肩上がりだったから増産・拡販で企業も銀行も成長できた。

 しかし、80年代のバブル破たんとともに成長は鈍化し、2002年以降、担保の無い短ころは金融庁の検査マニュアルで不良資産に分類されることになった。小泉・竹中体制下、不良資産の処理が急がれて以降、銀行は担保主義に徹し、「短ころ」は半減した。支店長の決済権限はなくなり、本店審査部が数字を見ながら信用調査を行うようになった。BIS規制で銀行は信用リスクの高い中小企業への融資を控えるようになった。銀行は、成長に必要なリスクマネーを供給するどころか、景気が悪化すれば優良中小企業の貸し剥がしや貸し渋りに走る「死神」となっていった。

 筆者は今、米国のプライベート・エクイティへの投資に取り組んでいる。特にミドル・マーケットといわれる売上10億円から1千億円までの非上場の中堅中小企業に投資するファンドは300近くある。米国のミドル・マーケットには20万社の中堅中小企業がひしめき、総合的な売上は1千兆円にものぼる。

 ミドル・マーケットに特化したファンドでは、1件あたり3億から50 億円の投資を実施している。そうしたファンドのスポンサーとなる機関投資家にとって、プライベート・エクイティは中長期の投資であり、短期的な相場動向との相関性が比較的低いことから、分散投資の一環としてポートフォリオ運用には欠かせない資産クラスとなっている。

 筆者が米国経済を底堅いとみているのは、じつはこうしたプライベート・エクイティファンドの層の厚さ、そして、潤沢なリスクマネーの活発な動きを見ているからである。さらに重要なのは、成長資金の出し手であるファンドマネジャーの目利き力である。彼らは常に競争にさらされ、淘汰されるので、結果、目利き力の高いマネジャーが収益を上げ、成功報酬を得ることなる。

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