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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

巨大ヘッジファンド崩壊の原因から学ぶヘッジファンド投資の注意点 2000年春

 

 

2000年春に起きた巨大ヘッジファンド崩壊の真相の第4回(最終回)です。第3回は目次3.巨大化ゆえに顕在化した経営管理リスクよりご覧になれます。

優秀なヘッジファンドといえども、一歩間違うと大きな痛手をうけます。投資を考える上で、ヘッジファンドの過去の事例から学ぶことが沢山あります。2000年春に起きた巨大ヘッジファンドの崩壊事例を元に、全4回に分けて、それまで優秀なパフォーマンスを上げていたヘッジファンドが崩壊したのか、ヘッジファンドが抱えるリスクについて説明していきます。

 

目次

  1. 市場拡大が裏目に
  2. ハイテク株相場の流れを読み間違え
  3. 巨大化ゆえに顕在化した経営管理リスク
  4. 巨大ヘッジファンド崩壊の原因から学ぶヘッジファンド投資の注意点

 

優秀なファンドマネジャーを雇用し続けることは難しい

人事管理もヘッドファンド会社経営の重要な点である。

ソロス・マネジメントの場合、運用資産額が増加するにつれ、小口で分散して腕の立つ小規模なファンドの運用者にアウトソースしてきた。機敏な動きができる単位に分散して収益を上げようとするのは当然といえた。その結果、ソロス・マネジメントのファンドは、ファンドを束ねたいわゆるファンド・オブ・ファンズになってしまった。

ここで問題なのが優秀な運用者が独立して自分のファンドを設立しようとすることだ。よい運用者を雇っても2年くらいたつと腕を磨いて辞めてしまう。経営者としては、業績のよい運用者をいかに長く引き止めるかが課題なのだが、それはなかなかむずかしい。ソロス・マネジメントとて例外ではなかった。

これら経営管理における行き詰まりが、巨大ファンドを崩壊させたのである。

これまでヘッジファンド業界は94年の金利上昇時。97年のアジア通貨危機、98年のロシア危機などをのりこえてきた。99年前半以降、多くのヘッジファンドのパフォーマンスはプラスに転じてきた。ヘッジファンド・ドット・ネット社の調査によれば、2000年第1四半期のヘッジファンドインデックスは10.73%の上昇を示している。

一時期隆盛を極めた大手ヘッジファンドが市場環境に淘汰されたことは何度もある。モーテージ証券トレーニングで時代を築いたアトキンも、94年の利上げとモーテージ市場の一時的な急縮小によって破産した。また、98年に破綻したキャピタル・マネジメントはまだ記憶に新しい。

そして、タイガーの廃業、ソロス・マネジメントの行き詰まりは、市場環境だけでなくファンドの経営管理の行き詰まりも崩壊要因になることを表面化させた。

 

巨大ヘッジファンド崩壊の原因から学ぶヘッジファンド投資の注意点

  1. 投資戦略や運用実績のみならず、適正な規模でのファンド運営ができているかに注目するべき
  2. 規模が大きいことは必ずしも利点とはならない
  3. 推測される固定費水準からみたファンドの損益分岐点となる資産額についてのチェックなども必要

 

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