通貨、戦争、世界秩序の変わる時

公開日: : 最終更新日:2015/11/27 大井リポート | 

人民元がSDR仲間入り、新たな通貨体制のパラダイムの始まりか?

中国が目指す人民元の国際化が、国際金融市場における通貨体制そのものを大きく変えてしまうのか?
戦後設立された国際通貨基金(IMF)は、加盟国の為替安定化や、国際収支の悪化した国に対して融資を実施し、国際金融市場の安定を図る役割がある。IMFにはSDR(特別引出権)という通貨バスケットがあり、金融取引の重要性を反映する通貨によって構成される。このSDRに人民元が仲間入りすることが、11月30日のIMF理事会で正式に決定される。
IMFの融資業務は「自由利用可能通貨」とSDRとで実施され、借入れを行っている加盟国は、SDRを自由利用可能通貨と交換する権利がある。この通貨バスケットの構成は、5年毎に見直される。
IMFは世界各国の政府や中央銀行の外貨準備高と通貨の配分率(アロケーション)を公表している。今回の見直し前の2010年の構成通貨とそのアロケーションは、米ドル41.9%、ユーロ37.4%、英ポンド11.3%、日本円9.4%であった。直近(9月末)の外貨準備統計によると、通貨別アロケーションが判明している6.663兆ドルの内訳は、米ドル63.75%、ユーロ20.51%、英ポンド3.83%、日本円1.92%、加ドル1.9%、豪ドル0.3%と、5年前に比べて、米ドルへの集中、そして、英ポンドと日本円の占める比重の減少が目立つ。


さて、この通貨バスケットに中国人民元が参入するとなると、英ポンドと日本円に代わる地位を得たいと、2020年までには人民元4.25%のアロケーションを目指すものと予想されている。将来は、人民元が14% から16%のレベルまでに引き上げるという積極的な見解を持つ関係者もいる。
2001年に中国はWTOに加盟し、自由貿易圏で「世界の工場」に引き上げられた。今度は人民元がSDRの仲間入りを果たし、国際金融市場で重要な地位を確保するという新たな挑戦に立ち向かう。AIIB発足もまた、こうした動きと同期している。
ところで、自由利用可能通貨とSDR組入れ対象となる通貨は、国際金融市場での取引上、信用力が欠かせない。通貨を支える信用力とは、国民経済の力であり中央銀行の金融政策である。その意味で、中国政府と中央銀行は、人民元改革、シャドーバンキングの焦げ付きや不良債権処理等の問題に、待ったなしで取り組まなければならない。
ここで、筆者がもっとも重視するのが通貨の「決済機能」である。日々、巨額のグローバルマネーの決済を支えるのはITである。テロにより決済機能が麻痺するリスクに対して、各政府はどのような対策をとっているか。つまるところ、通貨の後ろ盾は国家安全保障である。

SDRについての記事
「人民元のSDR採用に潜む落とし穴」JBpress(11月21日付)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151121-00045313-jbpressz-bus_all

 

ワールド・オーダー

オランド仏大統領がオバマ大統領をホワイトハウスに訪問するのと時を同じくして、トルコ軍がロシア軍爆撃機を撃墜する映像が世界中に流れた。ニュースを見てまず、ロシア軍機はそんなに簡単に撃墜されるのかと驚いた。
キッシンジャー博士は昨年、大著「World Order(世界秩序)」を出版した。ウェストファリア条約の結果「主権国家」が成立した。主権国家を中核とした国際関係の枠組みを描いているのだが、目下、その枠組みそのものが、崩れて来ているのではないか?「IS」は、中東の国境線を消しゴムで消しているような存在だ。
大きな枠組みが変動する(パラダイムシフト)きっかけは、当然、戦争である。戦争状態となった「ワールド・ディスオーダー」こそ、ゲーム・チェンジャーである。見方を変えると、「利権関係の再編成」の動きともとれる。国際金融市場における通貨体制もまた、こうした世界秩序と表裏一体となっている。
人民元が将来日本円に取って代わる地位を狙うとき、日本が世界秩序からはじき出されないために何をなすべきか?安倍内閣のアベノミクス、集団的自衛権、積極的平和主義等の真価が問われるときである。

 

年末にかけて、株安か?

通常であれば、今週の感謝祭からクリスマスにかけてホリデー気分になるところだが、今年はパリのテロ事件、その後もチュニジア等で続く自爆テロのせいで、気分は重い。多くのトップ・ヘッジファンドは既に株式へのアロケーションを減らしている。彼らは売却益に感謝するだろうし、私たちは平和であることに感謝する。

ブルームバーグ記事(11月17日付)
“Druckenmiller Among Top Managers Who Cut Back U.S. Stocks”

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-11-16/pointstate-reduces-exposure-to-u-s-stocks-by-more-than-half

 加えて、ある友人が「村上ファンドが話題にのぼるとそろそろ相場は下り坂」という興味深いコメントを話した。かつて、サブプライム・ショックとリーマンショックに先駆けて、日本では村上ファンドに当局の査察の手が入った。友人曰く、この事件は「村上ファンドはバブルを象徴しており、カネだけの時代が終わり告げるのだという兆しとなった」。そして、またもや村上ファンドがニュースネタとなっている(今度は村上さんのお嬢さんの番だ)。
 もうひとつ、気になるのが、原油価格下落の予想である。CNBCでは原油価格がバレル当り26ドルまで下がるという予想(ピークから77%減)を描いている。

http://www.cnbc.com/2015/11/18/the-chart-that-says-crude-oil-is-going-to-26.html

 年末年始にかけてボラティリティが高まることは間違いないだろう。

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