公開日: : 大井リポート | 

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 6月23日にEU離脱の可否を問う英国国民投票が実施された。そして、大方の予想に反し、英国は離脱を選択し、その日のうちにキャメロン首相は辞任を表明した。国際金融市場は「まさかの離脱」にショックを受け、24日の相場はリスク資産を売り、安全資産へ逃避するというトレーディングの巻き戻しで世界同時株安となった。

 しかし、週明け27日から売られすぎた株式市場で買い戻され、市場は少し落ち着きを取り戻したように見える。そして、これからEUとの離脱交渉が始まろうとしている。キャメロン首相は10月までは現職にとどまり事態を収拾したいと時間を稼ぎ、なるべく有利な離脱条件を引き出そうと秋までは正式に離脱しない方針である。

 一方、EU側はメルケル首相のリーダーシップのもと、なるべく早く英国には離脱してもらい、その間、他国の離脱を食い止め、団結を強化し、必要な改革を実施していくつもりだ。英国とEU側の思惑は完全にすれちがい、交渉には長い時間がかかるだろう。その間、妥協が成立しないなど先行きに不透明感が増せば、市場は不安から一旦買い戻しても売りに出るなど神経質な展開が続くと思われる。

 「先立つものはカネ」という諺どおり、投資マネーが金融市場の信頼・信認を保てるかどうかが最重要である。投資マネーは経済の潤滑油であり、マネーが市場を潤してこそ、実体経済に油が注がれ、エンジンが回転し、経済活動が活発になる。投資マネーは利益の確実性を求めて動き回り、政治的混迷やリーダーシップの不在といった予測不可能性や不透明感を避けようとする。

 EU経済圏が繁栄を保つには、今後も結束を固め、政治的統一を貫き、明確なリーダーシップと政策を示し続ける必要がある。さもないと、欧州は19世紀的な民族主義によって分断され、既存の政治体制が覆され、自由な資本移動や人の移動が制限され、ポピュリズムとプロパガンダに満ちた暗い革命とテロの混乱の時代へ引き戻されるだろう。

 ただし、イタリア地方選挙では新政党「五つ星党」がローマやトリノの市長を当選させ、スペインでの極左ポデモス党が躍進し、スコットランドが英国から離脱してEU入りを目指すなど、いくつもの兆候が吹き出して来ている。小国分立と内向きの地域民族的政治エゴの噴出で利害調整が難航し、EUが消耗すれば、その勢力が相対的に弱まる可能性はある。

 現実的なマクロ経済の観点から、世界の成長率は英国の離脱によって今年後半には0.7%減、2017年には0.6%減と試算されている。景気減速は必須であるが、景気後退というほどひどくはない。ただし、政治的安定と投資マネーの信頼が持続するという前提に立っての試算である。英国離脱の影響は、米国と中国では限定的と見られるが、日本には大きなマイナスとなる。世界の金融市場で不確実性が高まると投資マネーは円へ逃避する傾向がある。今年後半、来年にかけても円高が進むと筆者は見ている。そのため、日本の大手輸出企業では為替差損が予想され、株価も下げる傾向にある。

 実体経済の面では、EUと英国の交渉が長引き、官僚と弁護士が多くの時間を費やすだろうから、何も決まらない様子見の状況下、通商・貿易面での手続に多くの支障が続出するだろう。

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