再びGrexit の危機 – デフォルトしてもEU離脱はない –

公開日: : 大井リポート | 

2010年5月の最初のギリシャ危機から早5年がたつ。以来、ECB、EU、そして IMFはギリシャ政府の債務支払期限の延長や金利負担を引き下げるなど危機に対処し、同時にギリシャに対して赤字削減と構造改革を促して来た。ギリシャ政府は緊縮財政でかろうじて財政安定化をはかってきたが、国内景気は冷え込み、失業率は25%に達している。しかも財政赤字はGDPの175%と、まだまだ財政健全化の道は遠い。

今年1月に急進左派シリザ党のチプラス首相が政権を取ってから、ギリシャ情勢は一挙に不安定化し、デフォルト懸念も高まっている。現に今月30日には、年金受給者と公務員への支払いが迫っている。政府は地方政府や市から15億ユーロの支払い額をかき集めているが、先週すでに13億ユーロが預貯金から引き出されており、今後どのように帳尻を合わせて行くのか、財政破たん寸前の状況に見える。

その一方で、チプラス政権は、ロシアのガスプロム社とパイプライン協定を進めてきた。ロシアの天然ガスはウクライナ、東欧を通過してEUへ供給されて来たが、ウクライナ紛争と経済制裁から代替ルートが必要となった。そこで、黒海からブルガリアを経由しEUまでの「サウス・ストリーム」が企画された。しかし、EUの圧力を受け、このルートは昨年12月に断念。次に、トルコからギリシャを経由して地中海に出る「ターキッシュ・ストリーム」が検討された。

 

http://www.todayszaman.com/columnist/amanda-paul/game-on-for-turkish-stream_370649.html

 

ロシアの敵となったウクライナを通過せずに地中海に出るガスパイプラインを引きたいロシア、そして、少しでも現金を得たいギリシャの思惑は一致した。このルートに賭けるガスプロムからギリシャは50億ユーロもの前払金を受け取る用意があると独シュピーゲル紙が報じた。

これに対し、EUは反トラスト法で規制し、ガスプロムの動きをブロックしている。ギリシャ政府がガスプロムと取引するにはECの許認可を得る必要がある。ギリシャはロシアへの依存度をEUへ見せつけることでデフォルト事態に備えているとNYタイムズ紙は伝えている。

 

http://www.nytimes.com/2015/04/22/business/international/greece-tsipras-russia-gazprom-pipeline.html?_r=0

 

しかし、ギリシャのような小国が、このような大きな政治リスクに自らを晒す強硬な瀬戸際外交をどこまで有効に押し進めることができるだろうか。ギリシャは、ECBからの755億ユーロ枠のELA (緊急流動性支援)でなんとか生きながらえている。この命綱が切れると支払い停止(デフォルト)となる可能性がある。

 

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-04-26/greece-s-day-of-reckoning-inches-closer-as-debt-payments-loom

 

その命綱をヘッジする意味でギリシャはガスプロムを必要としている。ガスプロムはEUが必要とする三分の一の天然ガスを供給しており、ドイツとトルコは供給先の上位を占める。トルコはすでにガスプロムに天然ガス価格を引き下げるよう要求している。以上の状況から、ECBとの交渉決裂などから、ギリシャが一時的にテクニカルなデフォルトとなったとしても、おそらく「モラトリアム」のような円滑化が図られ、ギリシャがEUから離脱しないような縛りがつきまとうことになるだろう。日本でもリーマンショック後に中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)が時限立法で成立し、ゾンビ企業が生き残った。同じように、ギリシャもゾンビ国家としてしばしEUに留まるのではないだろうか。

総じて、地政学上の理由からEU離脱の可能性は低いと思われる。カギを握るのは、ドイツとロシアである。

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