ドイツ国債利回り上昇 市場の変化の先駆けか

公開日: : 大井リポート | 

4月末頃からドイツ国債(10年物)利回りの上昇、そして米国債利回りの上昇にマーケット参加者の注目が集まっている。

 

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPN5KHSYF01T01.html

 

先週金曜(6月5日)にはギリシャの債務支払いが迫っていた。その手前の3日に、ドラギECB総裁がユーロ圏のインフレ率が予想以上だったことを受けて、「マーケット・ボラティリティ(市場リスク)の高まりに順応する覚悟が必要」と発言した。投資マネーは、ドラギ発言を警戒し、ユーロからドルへシフトした。

アジア通貨危機やロシア危機など一般に国際金融市場に緊張が走るとき、多くの投資家は「質への逃避」行動に出る。具体的には、株やハイイールド債券などリスクの高い資産を売り、米国債やドイツ国債など安全資産を買う。そのため、ドイツ国債などの債券価格は上昇し、利回りが下がる。ところが、今回は、ギリシャ問題は危機には至らず、質への逃避といった動きが見られなかった。しかも、ギリシャのみならず、ユーロ圏で比較的リスクの高い南欧のソブリン債(イタリア、スペイン、ポルトガル)の利回りの目立った上昇もなく、ドイツ国債の利回りが上昇した。

これは何を意味するのか。BNYメロン銀行の為替ストラテジスト、サイモン・デリック氏も指摘するように、ギリシャの負担をユーロ圏全体が背負うことで、実質的に最大の負担をするドイツの国債が売られたのではないだろうか。実際、ECBが270億ユーロ、IMFが200億ユーロ、ユーロ圏加盟国が530億ユーロのギリシャ国債を保有している。欧州金融安定基金(EFSF)はEFSF債を発行してその財源を調達し、1440億ユーロのギリシャへの緊急融資を支えている。その中心にはユーロを支えるドイツの経済力がある。ギリシャはその債務を2020年までにGDPの180% から98%に減らすように圧力をかけられている。しかしながら、日本が財政赤字を減らせない事情を見ても、緊縮財政で債務を半減させることはかなり困難であろう。日本にはまだ稼ぐ力のある企業があり、まともな成長戦略が機能すれば、赤字削減を成し遂げる可能性がある。だが、同じ事をギリシャの経済規模で可能とは思えない。

さて、5日に米国の雇用統計が発表され、就業者数が予想以上に増加したことでドルが上昇した。しかし、G7サミットで、オバマ大統領は強いドルに対して懸念を示した。米国発リーマンショック以来、G7の中央銀行は大規模な金融緩和策(QE)を実施してきたのだが、ショックを起こした張本人である米国が、今年後半に、他国に先駆けてゼロ金利解除に踏み切るタイミングを探っている。

現在、各国中央銀行の外貨準備高は、米ドル、ユーロ、円、英の4大通貨が全体の95%占めている。この「ビッグ4」(米国、ユーロ、日本、英国)の中央銀行はQEを繰り返し、バランスシートを拡大し、景気を刺激するために財政支出を増やしてきた。そして、市場をマネーでじゃぶじゃぶにして、インフレを起こすか、通貨安を誘導するかといった出口戦略を画策してきたのだが、その一方で、年初から新興国ではドル建て外貨準備高の増加率が逓減している。いまどき米ドルにすり寄るのは、集団的自衛権で日米同盟を続けたい日本くらいかもしれない。折しも、AIIBで人民元の国際化を狙う中国もドルの外貨準備高を減らそうとしてきている。

人民元の国際化を狙う中国

 

AIIBが最高格付けAAAを取得し、低コストで資金調達を可能にすることで、中国は「一帯一路」の経済圏拡大と自国通貨の覇権を狙う。ただし、陸と海のシルクロードで北京から西へ向かうとき、必ずロシアとインド、そしてイスラム圏勢力とぶつかる。今後、金融は地政学リスクと重なり、TPPや新たな通商貿易圏もまた、その決済通貨の利権をめぐるせめぎ合いとなるだろう。

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