失われた信認

公開日: : 大井リポート | 

先週あたりからグローバル投資家が中国株を売り進んだ。過剰流動性で膨らんだ株式バブルが崩壊に向かうとき、AIIBを主導し、人民元の国際化を目指す中国がマーケットにどう対応するか、その能力を見極めるリトマス紙となったようだ。現時点では当局の介入で、一時的に相場が下げ止まったように見える。短期的には下げた分の半分ほどは戻るかもしれないが、グローバル投資家の一部は「これで中国市場の信認はなくなった」と話しており、次に底が抜けたときには売り圧力をいっそう強めることになりそうだ。

中長期的にみれば、政府当局の介入は投資家心理を冷え込ませる。グローバル投資家は、当局とマーケットの状況や介入のタイミングなど資本市場のメカニズムを冷静に学習し、さらに大きな利益を得ようと行動する。日本の株式市場と同様、中国市場もまた、投資マネー(外国人投資家)の狩場となるだろう。国内の機関投資家や個人投資家は、常に外国人投資家の動向に注意を払わなくてはならない。

さて、中国株式の下落は世界にどのような影響を与えるだろうか。フィナンシャル・タイムズ紙(7月13日)で、トレバー・グレサム氏は中国株式を「不思議の国のアリス」と称し、中国は1990年代の日本のようなデフレ不況となるだろうと予想している。

1980年代後半、日本は過剰流動性による未曾有のバブル景気を経験した。89年年末に日銀の利上げでその翌年からバブル崩壊が始まり、90年代は日本にとって失われた10年となった。しかし、日本のバブル崩壊が世界の株式や経済全体に影響を与えたわけではなかった。グレサム氏は、中国株式もまた世界の株式との相関性は低く、バブル崩壊で中国がデフレ不況に陥ったとしても、世界経済への影響は限定的と見ている。

 

“China’s equity bust is good news for global markets” by Trevor Greetham

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/c39bb4de-26f5-11e5-bd83-71cb60e8f08c.html#axzz3fv9zZz6C

 

その一方で、直近の金融市場では中国の景気減速の見込みから、原油などの資源の需要減退の先行きをみて、コモディティ関連株や資源連動型の通貨に影響が出ている。じっさい、ブラジル・レアルやロシア・ルーブル、豪ドルがドルに対して下げている。折しも、23ヶ月も続いた米国とイランの核協議が合意に達した。イランの原油供給が始まれば、原油価格はさらに下げるだろう。ブルームバーグ(7月15日)によれば、すでに多くのヘッジファンドがショートポジションを積み上げている。

 

“Iran deal makes oil markets shrug, for now”, by Issac Arnsdorf and Dan Murtaugh

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-14/iran-deal-makes-oil-markets-shrug-for-now-ic3xz4iw

 

ところで、「市場の信認を失う」ことがいかに恐ろしいかを中国とギリシャは知るべきであろう。このところ、欧州連合によるギリシャ支援の動きから、事態は小康状態を保っているが、ギリシャ国内の政情不安は予断を許さない。メルケル首相は、チプラス首相に対して「失った信認を取り戻した」と言ったようだが、ギリシャが再度信認を失うことになったら、以後取り戻すことは難しいだろう。

市場がリスク回避に動けば、グローバル・マネーは再び、安全資産の逃避先(スイスフランや米国債)へ向かうことになる。

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