米FRB利上げ後の世界の金融市場

公開日: : 大井リポート | 

中国の「ブラックマンデー」を皮切りに8月最後の1週間で株式も為替も相場が大きく変動した。9月に入り、直近の注目点は4日金曜に発表される米国の雇用統計である。その次の注目点は、17日のFRB政策決定会議においてイエレン議長がゼロ金利解除を実施するかどうか、また、そのときにどのような発言をするかである。

FRBはこれまで市場との対話を重視してきたし、マーケットは年内のFRB利上げを織り込もうとしてきた。今回は、9月に利上げするかしないかにかかわらず、利上げ後の見通しについて、イエレン議長が明るい話し方をすればマーケットは好感し、相場を押し上げるだろうし、その逆もあり得る。イエレン議長は、マーケット心理を読みながら巧みに誘導するにちがいない。

もうひとつの注目点は、FRBが中国リスクをどのように受け止めるかである。国際金融市場には、引き続き、中国経済の成長鈍化、ギリシャ危機の再燃、原油・コモディティ価格下落といった不安定要因があり、その中で中国の景況感悪化が最大のリスクである。

多くのエコノミストは中国経済が見かけよりもずっと弱いと見ている。GDP成長率が正式発表の7%の半分程度という見方もある。中国の貯蓄率の高さからGDPの40%をも投資し、仮に4—5%の成長しかないとすれば、投資効果が非常に悪い、とんでもなく非効率な経済運営をしていることになる。このままでは、地方政府が公共事業を減らし、2016年には不動産価格下落が見込まれ、これまでの過剰な設備投資の是正、海外直接投資の減少、株式市場の調整、不良資産の回収といった信用収縮は待ったなしであろう。人民元の切り下げや利下げだけではとてもこの荒波に立ち向かうには困難である。

中国経済の鈍化に伴い、中国への輸出で国民経済を支える新興国は特に大きな打撃を受ける。特に資源輸出国は、資源安、通貨安、経常赤字の増加、ドル建て債務拡大の重荷を背負うことになる。特にロシアやブラジル、インドネシアでは大きなマイナス影響がある。

The Guardian祗の記事によれば、中国経済への依存度の高い韓国がアジアのなかでは大きな打撃を受ける可能性がある。例えば、中国への輸出額は、日本が180億ドル、韓国が138億ドルであるが、GDPの大きさからみると韓国のほうが中国への輸出に国民経済が依存している度合いが高いのである。

 

http://www.theguardian.com/world/ng-interactive/2015/aug/26/china-economic-slowdown-world-imports

 

一方で、米国のGDPに対して対中輸出額の比率は小さく、実体経済の面で中国経済減退からの大きな影響を受けない。仮に人民元10%切り下げたとしても、FRBによる利上げは必須である。米国経済は堅調に回復している。中央銀行相場から正常化に向かうべきだし、今正常化に向かわなければ、2013年5月のテーパリングから予期していた出口戦略が無効になってしまう。筆者は個人的には9月に0.25%の利上げを実施すべきだと考えている。この実施にタイミングが後にずれればずれるほど、市場へのマイナスのインパクトは増幅されるのではないか。

ただし、世界経済全体のスローダウンも明らかで、米国の金利政策正常化は、オックスフォード・エコノミックスの予想によれば、以前よりも利上げの速度はゆっくりと、その上げ幅もゆったりとしたものになるという。同社の予測によれば、2016年にFFレートは1.59%、17年に2.39%上昇。人民元が10%切り下げとなれば、16年に1.38%、17年に2.23%上昇と見込んでいる。

それでは、人民元のさらなる切り下げはあるのか。中国は8月に変動相場制へと大きく舵を切った。米ドルが他通貨に対して強くなったさいに、ドルにペッグしていた人民元も引きずられて割高になった分を切り下げたと見られる。今後、中国からの資本流出に伴い自由化が加速すれば、日本への資本流入も視野に入ってくる。

JPモルガン銀行市場調査部長の佐々木融氏によれば、円の需給関係が根本的に変わったという。この指摘は大変重要で、日本の経常収支の黒字増大が恒常的な円高圧力になる。貿易収支は原油安などからゼロに近いところまで回復しているが、第一次所得収支(企業が海外子会社から受け取る配当金収入、海外への直接投資収益など)が増え続けている。日本の企業は海外でモノ作りをして稼ぎ、その収益を日本に戻すので、円高圧力になるというわけだ。

オックスフォード・エコノミックス社の予想では、日本の金利も2016—18年にかけて上昇トレンドになる。124円から116円台へ向かったドル円相場だが、直近はやや円安に戻るとしても、中長期的には構造的な円高傾向が見えてくる。

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