法王の訪米、FRB、中国、コモディティ、シリア、そしてマーケット

公開日: : 大井リポート | 

9月21日の週、シルバーウィーク中、世界は大きく動いた。習近平国家首席が国賓としてオバマ大統領に招かれた。中国は南沙諸島を埋め立て、軍事的拠点として滑走路を完成させたところだ。米中首脳会談では、サイバーテロと南シナ海をめぐり、両者の緊張関係が浮き彫りになった。

米中関係を金融面で見ると、人民元切り下げと原油・コモディティ価格の下落、そして、FRBゼロ金利解除が連動しており、中国の成長減速は国際金融市場、特にコモディティ市場にとって大きなリスク要因である。じっさいに、FRBは習氏の訪米前の9月17日の政策決定会議で利上げを見送ることになった。

中国の成長が落ち込めば、中国への輸出で自国経済を支える国々(韓国、香港、日本をはじめとするアジア諸国、ブラジル、ロシア、チリなど)にマイナス影響が出る。一方、もっとも影響を受けないのが米国と英国である。

習氏と時を同じくしてローマ法王が訪米した。ニューヨークのセントラルパークに8万人が押し寄せるなど、法王の訪問地はどこも熱狂的な歓迎ムードに包まれた。また、法王は、国連総会で世界平和と人権、環境保護を訴え、金融資本主義が弱く貧しい人々を搾取で苦しめていると訴えた。

じっさい、法王の首都ワシントン訪問では、思いがけないことが起こった。米国政府は10月1日から新年度となるが、その直前で、ベイナー下院議長(共和党)が法王と二人きりで会話を交わした後、突然辞任を表明したのだ。共和党内は一枚岩ではない。そのとりまとめ役の議長は2016会計年度の歳出計画をめぐり、保守派陣営と衝突を繰り返していた。法王が平和を説くその演説の最中に、法王の背後で議長が涙をぬぐう様子は何度かテレビに映し出された。議長の改心のおかげで、とりあえず暫定予算成立で政府機関の閉鎖は防げるだろう。法王はこのようにして、連邦政府閉鎖で苦しむ貧しい人々のくらしを救ったのではないだろうか。

また、金融市場では議長辞任のニュースを受け、米国債2年物は下げ幅を縮小した。一方、イエレンFRB議長は、年内残りの政策決定会議で利上げを表明しており、債務上限と予算問題がぶり返す可能性もある。

ところで、フォルクスワーゲン(VW)排ガス不正非難と中国という二つのキーワードが見事に環境保護の観点でひっかかった。大量のシリア難民を受け入れるドイツの誇りをくじくようなスキャンダルである。VW社の問題は自動車業界全体に波及する可能性がある。

中国、原油・コモディティ、その先には「グレンコア」というキーワードも出てくる。コモディティ・トレーディングの巨人、グレンコア社の信用力に陰りが見える。世界最強と評価されるコモディティ・トレーディングルームには在庫が山積みになっているという声もある。グレンコアはコモディティ危機を体現しているのかもしれない。

 

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/f7fbc0b4-6824-11e5-97d0-1456a776a4f5.html#axzz3nMvSUUtL

 

筆者はかつてウォール街の中堅投資銀行キダー・ピーボディで働いていた頃、「キッチンシンク・ボンド(台所の流し台に溜まった債券)」という言葉が流行った事を思い出す。1992−94年にキダーがモーゲージ担保証券(MBS)の仕組債を大量に発行し、MBSトレーディング市場を大きく独占する形で収益を上げていた。ところが94年にFRBが利上げに踏み切ると、トレーディングルームにはMBS在庫が溜まり、ウォールストリート紙がそれを「キッチンシンク」と評したのだ。キダーの信用力はがた落ちとなり、まもなくキダーは親会社GEによってペインウェーバーに吸収合併させられた。市場を席巻した金融会社の終焉には似たようなストーリーがありそうだ。

 

さて、シリア難民が欧州に押し寄せる中、フランスはIS(イスラム国)攻撃のためシリア空爆を開始した。さらに、ロシアも参戦した。アサド政権を支えるロシアと反政府勢力(対アサド)を支援する米国の共通の敵はISなのだが、ロシアはISを攻撃するかと思いきや反政府勢力を空爆している。ロシアは地上戦の用意もあると報じられている。「敵の敵は友」となるのだろうか?年末にかけて、リスク要因は増えるばかりである。

 

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-34419003

 

 

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