核セキュリティと米ソ金融戦争

公開日: : 大井リポート | 

新年度が明けて、株安・円高が進行している。実際、3月31日と4月1日にワシントンで開かれた第4回核セキュリティ・サミットに向けて、原油安が再び重しとなっていった。この核軍縮会議では、ロシアの欠席が目を引いた。地政学リスクとして、北朝鮮の挑発的行為も深刻化である。

 核セキュリティ・サミットのウラには原油や通貨をめぐる「金融戦争」がある。原油安の背景で繰り広げられるのは、IS、シリア、そして北朝鮮をめぐる米ソ金融戦争である。原油安は、中国経済の減速に加え、ブラジルやロシア、サウジアラビアといった資源国経済の脆弱性についてマーケットの不安感をかき立てる。

 さらに、「パナマ文書」が公表され、ロシア、サウジアラビア、中国、ウクライナ、アイスランドの政治指導者、およびその親族や側近が莫大な資産をタックスヘイブンに隠し持っていたことが暴かれた。自国民から税金を取り立てる張本人が、公権力を私物化し、私腹を肥やしている実態が明るみに出た。すでにアイスランド首相は辞任したが、この問題は欧州や中国の内政を揺るがすことになりそうだ。

 さて、20世紀は石油の時代だった。欧米は19世紀から引き継いだ植民地政策で中東地域の安価な石油を支配してきた。時の政府は国際石油資本を地政学上の手先として利用し、その見返りとして利権を守ってきた。例えば、英国のアングロ・ペルシャンオイル社(現在のBP社)は過去60年にわたりイランの石油の利権を牛耳り、シティに収益をもたらした。米国の国際石油資本も同様に、米国の軍産複合体とウォール街に莫大な利益をもたらしてきた。また、オリガーキから石油の利権を国家に取り戻したプーチン大統領にとっても原油は国富の源泉である。

 原油安が続くと、エクソンなど大手石油企業の収益が圧迫され、株価を押し下げる。ロシア、サウジアラビアなど一次産品輸出国では歳入が減り、財政赤字に陥り、ドル建て外貨準備高や政府系ファンドの資産を取崩す事態となる。

 このように、原油安は世界の株式相場を下げる要因となるのだが、米国においては様相が異なる。米国は20世紀最後の10年でIT革命を成し遂げ、マイクロソフト、アップル、グーグルといったIT企業が世界をリードしている。グローバルなソフトウェア、グローバルなサプライチェーン、モノづくりにおけるプロセスにIT革命の成果が波及し、様々な産業連関を経てさらに効率化している。加えて、IoTやAIでオペレーションを高度化し、生産性を高めようとしている。

 こうしたIT企業はかつての国際石油資本と同様、時の政府と利権を分かち合える関係にあるのだろうか。カリフォルニア州での銃乱射テロ事件の捜査でiPhoneのロック解除をめぐりFBIとアップル社が対立したように、事業の自由を求める企業は、国防上の問題で政府との対立が続きそうだ。

 世界が国家資本主義に動き、各国中央銀行がその先鋒となって大規模な金融緩和を実施し、金融戦争が起こるなか、タックスヘイブンも淘汰され、やがては安全保障上シームレスな金融市場が作られるのかもしれない。

関連記事

no image

総体的奴隷制国家 日本

  Hさんは大学の大先輩。長年大手企業の副社長を務め上げ、定年を迎えられる。先だってお会いしたときに

記事を読む

バブルの生成と破綻は人間の性: ウォジンローア博士かく語りけり

  アルバート・ウォジンローア博士は、かつてニューヨーク連銀でボルカー氏と机

記事を読む

no image

震災復興には財源と電源確保を

 東京在住の米国市民には退避勧告、放射能に対する予防や必要な薬の配布など毎日のように米国大使館からメ

記事を読む

原油安の先にあるものとは?

先週はドラギ総裁の超低金利政策続行のニュースにマーケットが好感し、日銀の次なる緩和策にも期待が高まっ

記事を読む

出口を出たアメリカに道筋の見えた欧州、さまよう日本。

FRBは、12月14日に予想通り0.25%の利上げを実施した。米国経済が穏やかなペースで成長し、雇用

記事を読む

no image

QEが終わり、構造改革がやってくる

 去る5月22日にバーナンキFRB議長が量的緩和(QE)縮小を初めて示唆したことから、債券市場は弱気

記事を読む

“Sell in May and go away” は正しいか?

5月13日に、SAILヘッジファンド・アクセスセミナーを開催しました。講師の小松啓一郎博士からは、ウ

記事を読む

昭和の日とトランプ政権最初の100日

 本日、4/29は昭和天皇の生誕日、「昭和の日」である。偶然にもトランプ大統領就任から100日目とな

記事を読む

no image

TPPは新たな外圧になるか

 20日は一日中、日米関係の集まりが重なった。午前中は東京産業人倶楽部の賀詞交歓会にて、米国大使館公

記事を読む

二番底の恐怖 No more war!

先週のマーケットでは、FRBの政策決定会議(FOMC)でイエレン議長がゼロ金利解除のタイミングをどう

記事を読む

じぶんちポートフォリオ ヘッジファンドニュースレター

無料メルマガ

GSニュースメルマガ

週1回、大井幸子厳選の最新国際金融・経済情報が届く無料メルマガです。

登録はこちらから メールアドレスを入力してお申込みください。

follow us in feedly rss
  • GSニュースメルマガ

    週1回、大井幸子厳選の最新国際金融・経済情報が届く無料メルマガです。

    登録はこちらから メールアドレスを入力してお申込みください。

PAGE TOP ↑