「米国第一主義」トランプフレーションの効果とゆくえ

公開日: : 大井リポート | 

By Gage Skidmore, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=51041412

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 11月24日は米国の感謝祭で、家族で感謝祭を過ごすために移動する人々で今週は空港が混雑し、4350万人が車で移動したために道路が大渋滞した。その翌日からはクリスマス商戦が本格化し、一年で最も華やいだ季節がやってくる。

 このところ株式相場も華やいでいるようにみえる。ダウ平均株価は1万9千ドル台に達し、市場最高値を更新している。主要な景気指標は好調で、耐久財受注が前月比で4.8%と大きな伸びを見せ、小売り売上高、住宅着工件数や雇用関連指数も良好である。12月13日にはFRBの金融政策決定会議で0.25%の利上げが確実視されている。

 トランプ次期大統領決定後の相場はトランプ・リフレーション、略して「トランプフレーション」と称されている。トランプ政権がインフラ整備などで財政支出を拡大し、リフレーションを起こし、米国を成長させるというシナリオに期待感が高まっている。この楽観的期待が今、株価とコモディティ価格を押上げ、債券価格下落から金利が上昇し、他の通貨に対してドル高を招いている。市場では、エネルギー、工業株、素材関連セクターが買われている。

 トランプフレーションは「米国第一主義」、米国を再び偉大な国にすることを目指すものだが、他国への影響はどうか。ドル高で、米国と新興国の株式市場では明暗が分かれている。マレーシアでは1998年のアジア通貨危機以来の下げ幅となった。先週のマレーシア株式市場からは250億ドルもの資金流出が見られた。ドル高金利高で、今後も新興市場から米国へとドルが吸い上げられていく動きが続きそうだ。

 米国内でも条件反射的に上げたトランプフレーション相場は、22日にはすでに一服した。23日には、インフラ整備の原資や不足がちな労働力をどこから調達するのかといった現実的な課題が検討され、新政権発足以降は、期待感で膨らんだ株価も冷静に見直され、やや修正がかかるかもしれない。

 また、来年以降はゆるやかな金利上昇となり、今後5年で米国債の10年物利回りが6%まで上昇するという予想がある。金利上昇は住宅ローン金利の上昇に直結する。個人の資産管理もまた、ゼロ金利からリフレーションへの転換に備える必要がある。

 さて、日本市場は円安・株高の勢いで、輸出企業の年末決算にもプラスとなりそうだ。また、債券市場では、イールドカーブ・コントロールで日銀が長短期金利を管理している。日本に投資するヘッジファンドも年末までは円ショート・株ロングのポジションでおおいに稼げるだろう。問題はその先である。トランプ新政権発足後、TPPなど日本にとって重い課題が待ったなしでやってくる。

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