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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

2017-18年は嵐の前の静けさ「ミンスキー・モメント」が終わる時

新年おめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。

今年前半の投資環境について

昨年12月26日に私は「メサイア」のコンサートに出かけた。オラトリオの詩「トランペットが鳴り響き、全てが変わる」 “We shall be changed”を聞くと、2017年にいよいよ変化が始まると感じた。

VIX指数を見ると、マーケットは2008年のリーマンショック直前と同様、「嵐の前の静けさ」、凪のようだ。英国のEU離脱やトランプ勝利といった想定外のショックにもかかわらず、なぜマーケットでは上昇が続くのか。そして、いつまで続くのか。

出所: Investing.com (Jan 7, 2017)

凪の状態をHyman Minskyにちなんで「ミンスキー・モメント」と呼ぶ。各国中央銀行が超緩和策を取り、政府が財政拡大を続けるとき、投資家はマーケットを信頼し買い進む。しかし、いったん投資家が売り手に転じれば、買い手はつかずマーケットは一気に下落し、金融システムは危機に陥る。

正月休みにはヘンリー・ポールソン(リーマンショック時の財務長官)著『ポールソン回顧録』、James Rickardsの新著 “The Road to Ruin”を読んだ。どちらの内容も次なる金融危機への警告を含んでいる。1987年のブラックマンデー、1997-98年のアジア通貨危機とロシア危機、2007-08年のサブプライムショックとリーマンショックといった周期性を考えれば、 2017-18年は要注意である。

危機のトリガーは世界中に地雷のように埋められている。目下気になるのは、トランプ新政権そのものの正当性の問題である。米国の正当性そのものにかかわる一大事であり、正当性の根拠が揺らげば米国の制度や基盤そのものがアノミー化するリスクがある。

その発端になるのが、トランプ新政権と諜報当局との間に露呈している相互不信である。11月の大統領選挙中にプーチン大統領が民主党をターゲットにサイバー攻撃を仕掛け、様々なプロパガンダに携わり、トランプ勝利に関わったという報告書が公開された。クラッパー国家情報長官は上院軍事委員会の公聴会で「これは戦争状態ではないが」と発言したが、これは「一歩間違えれば戦争状態になる」という意味にも聞こえる。さらに、トランプ氏が自国の諜報当局よりもプーチン氏との関係を重んじるかのような発言をしたことで、新政権が国家安全保障よりもビジネス上の利益を優先するのかという大きな疑念の渦が広がっている。異常な事態である。

参考記事 http://www.huffingtonpost.jp/2017/01/06/russia_n_13991954.html

米国市場はトランプ政権発足の直前に、グローバル市場では中国の春節の頃に最初のボラティリティの波がやってくるだろう。日本も含め、今年前半、国際金融市場は大きな変動に見舞われ、日本も円高、金利上昇の重圧に苦しむことになるだろう。

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