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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

トランプ政権発足から半年が経って、ヘッジファンドに見られる奇妙な動き

 トランプ政権発足から半年が経った。オバマケアの撤廃もままならず、このままでは共和党内の内ゲバや議会との断絶で、政策が何も実行できない可能性がある。大減税やインフラ投資はいつどうなるのか?期待で膨らんだ株価はどうなるのか?

 こんな状況でヘッジファンドに奇妙な動きが見られる。トランプ登場以来、実は多くのヘッジファンドが先行きに疑心暗鬼だった。健全な猜疑心から、彼らは下げ相場に備えてショートポジションを取ってきた。ところが、ダウ平均株価が連日最高値を更新する勢いに押され、ついに耐えきれなくなり、ショートカバーに転じ(空売りした株を買い戻し)、そのおかげでさらに株価を釣り上げてしまった。

参考記事 “Short Sellers Give Up as Stocks Run to New Records” (WSJ 7/21)
https://www.wsj.com/articles/short-sellers-give-up-as-stocks-run-to-new-records-1500629404

 年初来ヘッジファンド全体の平均リターンは、ダウ平均株価などインデックスに負けている。それを取り戻そうとヘッジファンドが集団行動に出ることほど、危険な賭けはない。自分で自分の首を絞めるだろう。

 そもそもヘッジファンドの本来の役目は、相場動向と相関性の低い(ヘッジの効いた)投資戦略を駆使することで安定収益を確保することなのだが、どうも様子がおかしい。2007年のサブプライム・ショックの時と様子が似ているのだ。10年前の夏にもクウォンツ系ヘッジファンドが崩れ、1年後のリーマンショックにつながっていった。相場のウラをかいて密やかに儲けてきた少数精鋭のヘッジファンドがマジョリティとなった今、そのさらにウラをかいた方が賢いかもしれない。

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