今、見えている3つの危機

 

2014年明けてから、情勢がめまぐるしく変動しています。いつ「想定外」の事態が起こっても不思議ではありません。私たちは、今、三つの危機に直面しています。 三つの危機とは、国際秩序の根本的な揺らぎであり、金融、安全保障が表裏一体となった大きな変化の最中にあります。以下、それぞれの危機を概観します。一方、「危機」とは、国家にとっても企業にとっても、一見危ないけれども商機にも転じるチャンスであります。

 

1. マーケット:三尊天井

ブルームバーグ記者でFRBウォッチャーとして名高い山広恒夫氏は、米国経済に関して、

「これから景気回復が加速するというシナリオは描きにくい。09年6月に景気の谷を経過したあと、強力な回復は既に終わり、持続的な成長過程から減速の段階に移行してきたとみるのが自然だ」(Bloomberg 3月12日付)

と述べています。

また、米国の景気と同様、株価も既にピークに達し、「1990年代から生成が始まった三山の三つ目の山頂からの落下であり、三尊天井が形成されることになります。この三尊天井は過去1世紀をさかのぼってみても最大級かつ異様な高みに達しており、ここからの崩落は数世紀にわたる米国経済の長期成長波動の終焉ととらえることができるでしょう」と述べています。

 

(三尊天井のグラフ)
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20世紀が米国の世紀で、第二次大戦後に「世界の警察官」として自由主義を守り、1989年のベルリンの壁崩壊と冷戦終結以降、米国は、一国覇権主義を掲げ国際秩序を管理してきました。そして、そのために莫大なコストを払いました。2008年のリーマンショックを経て、米国は一国覇権主義の幕を閉じようとしています。

折しも年明け2月に、イエレン氏がFRB新議長に就任しました。FRBの創設を定めた連邦準備法の成立から百年目たち、初めての女性議長としてその手腕が期待されています。

山広氏の指摘の通り、米国景気が既にピークに達しているとすると、イエレン氏が前任者のバーナンキ議長から引き継いだ「テーパリング(量的緩和縮小)」を粛々と進めることは、意図的なバブル終焉を意味します。その後にくる新しいパラダイムとは?それを読み解くには、金融を含むさらに大きな枠組みを考える必要があります。

 

2. 国際関係:ウクライナから中国、朝鮮半島情勢

米国の「テロとの戦い」は、「シェール革命」が出口戦略となったと考えられます。画期的な掘削技術革新によって、米国に十分なシェールガスとシェールオイルが使用可能となり、資源の自給自足が達成されることになりました。シェール革命により、中東石油産出国へのエネルギー依存度も減り、米国の中東政策も大きく変わりました。

 

2010年末からチュニジアから始まった「中東の春」は、リビア、エジプト、シリア、イランなど中東地域に波及し、さらに、ウクライナ、アフガニスタン、ユーラシア大陸を経て、中国、朝鮮半島にまで影響が及んでいます。米国の勢力撤退で真空地帯となった地域では、地元の統治機構は米国支配の代理人としての正当性を失い、宗教的派閥や少数民族の勢力が一気に吹き出し、複雑系セクショナリズムの戦場と化しています。百鬼夜行のような内戦事態を収拾する大きな権力が存在せず、強力な軍部しか統治できない状況があり、不安定化リスクが高まっています。

 

こうした一連の変化のトレンドの上に、直近のウクライナ危機、クリミア共和国の独立宣言を見る必要があります。国際情勢に詳しい小松啓一郎氏によると、クリミア、ソチ、チェチェンを結ぶ線上に、チェルケシア、タタールといった抑圧されてきた多くの少数民族の存在があります。冬期オリンピックのウラで、ロシア系住民を守るという名目で、プーチン政権は10万人もの兵力をソチ周辺に結集させましたといいます。

 

ロシアは、シリア内戦に米国が軍事介入しなかったことで、欧米は軍事力をウクライナには出さないとロシアはみています。米国が軍事介入しなければNATOも動きません。欧州の穀倉地帯でもあるウクライナに欧州が単独で軍事攻撃するとは思えません。しかも、欧州は原油、天然ガス液、石油製品の約30%をロシアに依存しています。

 

今後、ロシアは、クリミア半島に加え、ロシア系住民の多いバルト海、カザフスタンへも軍が侵攻する可能性があります。そうなると同時多発的に様々な宗派対立や民族紛争が勃発し、種々多様なテロ組織が介在し収拾がつかないシリアのような内戦状態が点在する状況が予想されます。 さらに、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシは旧ソ連時代に核兵器を保有した国です。戦争状態の中、核不拡散条約が事実上無効になり、核が拡散する最悪の状況を想定する必要があると小松氏は述べています。

 

核戦争の脅威は、これまでの人類の歴史や文明すべてが崩壊するハルマゲドン級のリスクといえます。今こそ、真剣に世界平和を築く努力をすべきときです。

 

3.資源・食料危機

多発する危機、緊張する国際関係が今後のトレンドとなれば、原油、天然ガスなどの燃料資源、食料などライフラインの供給が細ってきます。戦時中のように物資が窮乏化してくると悪いインフレが起こります。戦火に逃げ惑わなくとも社会的に弱い立場の人たち(年寄り、女性や子供など非戦闘員)は、食べるものにも欠くようになります。

 

欧州にとっては、ルーブルの価値が急落に下落することでユーロへの危機が波及するリスクが高まります。また、米国は戦略的石油備蓄を取り崩し、原油の供給量を増やし、原油価格を下げ、ロシアのルーブルに価値下落をもたらしています。

 

通貨の混乱や金融危機を生き残るために、戦略的物資の備蓄や食料自給が多くの国にとって必須の事態となりそうです。

 

危機の原因は、1989年のベルリンの壁崩壊から進んだグローバリズムが行き詰まり、再構築を余儀なくされているためです。これまでの国際秩序を支えて来た自由貿易体制、それを裏書きするマーケット・システムを前提とした米国一国覇権主義の終焉によるものです。その次に来る新たなパラダイムが確立するまで、多種多様な不測のリスクに備える必要があります。

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