グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

ヘッジファンド・マネジャーからファミリー・オフィスへ

logo 私はニューヨークで、ヘッジファンド運用者や彼らに投資する機関投資家やファミリー・オフィスなど多くの人々と知り合いました。そして、投資運用のスタイルやお金をめぐる人間関係について彼らからたくさんのことを学び、ヘッジファンドは私のライフワークとなりました。

ヘッジファンドへの投資家の多くは、年金基金や大学基金、財団など息の長いお金です。米国の大手財団の多くは、19世紀末に一代で巨万の富を築いた資本家たち ―ロックフェラー(石油)、フォード(自動車)、グッゲンハイム(鉱山・精錬)、カーネギー(鉄鋼)、バンダービルト(鉄道)— です。彼らは一族の絆を強め、お金が分散しないように「財団」の形で集中管理し、代々増やして行き、その資金を美術や音楽などの芸術振興、教育や様々な慈善活動を続けています。

こうした「オールドマネー」に対して、20世紀末に一代で巨万の富を築いた「ニューマネー」の筆頭長者は、IT革命の寵児、ビル・ゲイツです。ビル・ゲイツ夫妻は、お父さんのポール・ゲイツ、そしてゲイツ財団への資金提供者であるウォレン・バフェットとともにタックルを組んで、ポリオ根絶に取り組みなど、世界の貧困撲滅に貢献しています。

ITに加えて、20世紀後半に富を築いて来たのはウォール街の大物たち、そしてジョージ・ソロスなどヘッジファンドの成功者たちです。彼らは20世紀のまさに「ニューマネー」です。ニューヨークの主な美術館やメトロポリタン・オペラ、カーネギーホールのトラスティ(理事)の面々をみると、たいていがこうした人たちです。

ソロスほどのレジェンドではありませんが、私の知るグレン・デュービンは1957年生まれ、その相棒のヘンリー・スワイエッカは1955年生まれで、まだ若いヘッジファンドの成功者です。二人は幼なじみの仲良しで、投資銀行で腕を磨いたあと1984年にDubin & Swiecaを立ち上げ、複数のヘッジファンド運用者に投資をするマルチ・マネジャーファンドの運用を始めました。1992年には、機関投資家向けのビジネスに切り替え、Highbridge Capital Managementを創設しました。ハイブリッジとは二人が育ったワシントン・ハイツにある「高架式水道橋」のことです。

2002-03年頃、私は知人と共にハイブリッジのヘッジファンドを日本の投資家に紹介したことがあります。その直後の2004年にハイブリッジはJPモルガン・チェースに一部買収され、2009年には完全に買収されました。現在、ハイブリッジは320億ドルの資産を運用しています。そして、創業者利益を得たグレンもヘンリーも共にビリオネアーとなりました。

ヘッジファンドの運用者は自分のお金に加えて他人の資金も運用しますが、ファンド運用からリタイヤした後は、自分だけのお金を運用するいわゆる自家運用のファミリー・オフィスに専念します。ソロスは2011年に投資家に資金を返却しました。そして、”Open society”を広める大義ある資金を動かしています。ソロスに代表されるように、ヘッジファンドはファミリー・オフィスの資金を運用して成長し、成功すると自らが運用するファミリー・オフィスとなっています。

現在、デュービンはCastleton Commoditiesを、ヘンリーはTalpion Fundをそれぞれ設立し、新しい投資を行っています。ソロスの下にいたドラッケンミラー、そしてCaxtonの創設者コブナーが自らの新しいファンドを設立した流れにあると思います。総じて、ヘッジファンドはどこまでもチャレンジを目指し、ダイナミックです。

(注:人名の敬称略)

<参考記事>
デュービン氏のインタビュー (ブルームバーグ)http://www.bloomberg.com/video/highbridge-capital-s-dubin-on-investment-strategy-KvLA4JK3Sh~nHyTi~Z0fMw.html

デュービン氏は、インタビューのなかで、「ヘッジファンドはアルファ(絶対値収益)を追求する」と言っています。

こんなにリッチなヘッジファンド運用者たち(Forbes)
http://www.forbes.com/sites/edwindurgy/2013/09/16/americas-richest-hedge-fund-managers/

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