金融審議会による「高齢社会における資産形成・管理」報告案に注目
筆者は厚生労働省関係の年金シニアプラン研究機構に理事として関わっている。ビジネスでも、年金基金のオルタナティブ投資から個人の401(k)まで、広く年金運用について関わってきた。
つい先日(5/22)、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが「高齢社会における資産形成・管理」報告案をまとめた。かつては「高齢化」と言われたが、今や「高齢社会」が現実となった。
金融庁は若年層に対して「年金の準備は個人の自己責任・自助努力でお願いしたい」と言っている。もはや国や企業の制度をあてにしてもらっては困るので、企業の人事部や個人に向けた金融リテラシー教育が必要だという。
参考資料(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20190522/02.pdf)
筆者は『お金の正しい守り方』(2012年 日経プレミア新書)で「じぶんちポートフォリオ」の重要性を説き、『お金を守りたいなら、これだけやりなさい!』(2018年 フォレスト出版)で具体的なポートフォリオの作り方と管理方法を伝え、セミナーでも教えてきた。
今の時代、ネット証券やETFを利用して、気軽に数万円から、分散積立投資ができる。長期運用で資産形成も、自分年金を作ることも、十分可能だ。しかし、誰もそのための手法を教え、きちんとした「ソリューション」を提供してこなかった。そんなことをしても金融商品を作って販売する金融機関が「セルサイド」として儲からないからだ。
筆者が「エグい」と思ったことは、企業年金が企業型確定拠出年金(DC)に移行する中、「従業員が選択する投信商品の多くがスポンサー企業の関連機関(主にメインバンク、主幹事証券など)が販売する商品である」という事実である(注)。全ての投信がダサい商品だとは言わないが、なにぶんセルサイドはなんとか儲けようとするものだ。
一個人としては、どのような金融商品(投信)が資産形成に役立つのかを見極めなければならないし、そのためには「知は力なり」で、ある程度の基本的な見識と知識(金融リテラシー)が必要だろう。国民一人一人が自分で資産形成し、資産を守らなければならなくなった今、そのツールとなる「じぶんちポートフォリオ」は、個人のエンパワメントである。
(注)論文「投資メニューに見る企業がた確定拠出年金のガバナンス」(生活経済学研究 Vol.45)、村上恵子、西村佳子、西田小百合共著
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