「グレート・リセット」は文明を滅ぼす
コロナショック直後に出版された『グレート・リセット』が話題になり、そこに記された内容がとても恐ろしい、どうしたらいいかとうろたえる人もいます。
私も読みましたが、内容はカール・マルクスが体系化した資本主義のメカニズムを破壊していく手法とプロセスが述べられていると思います。資本主義は、民主主義、内面の自由、そして法の支配と一体となって近代市民社会を形作ってきました。それを「リセット」(一旦チャラにして新しく置き換える=革命?)した後にどのような社会がやってくるのか?
マルクスによると、下部構造(経済体制)が上部構造(政治、イデオロギー)を決定づける。資本主義経済が破壊されれば、民主主義的な政治体制は終わり、法の支配に基づく市民的自由も終わる。私有財産も終わります。
では、実際の資本主義はどうでしょうか?これまで、金融危機が繰り返され、今は各国中央銀行が協調してゼロ金利、もしくはマイナス金利を実施し、資本の自己増殖を止めようとしています。危機や不況がなんどもやってくると、失業者が増え、中間層が「自らの労働力以外何の生産手段を持たないプロレタリアート」の地位に振るい落とされていきます。マルクスによれば、やがて、99%のプロレタリアートと1%の大資本家とに両極分解し、階級闘争に発展し、プロレタリア独裁となります。
資本主義亡き後はマルクス主義者の手により社会主義国家が出現し、国家が全ての生産手段を把握し、中央集権的に管理する体制が作られます。具体的には、ソ連のような「大きな」政府の出現です。さらに、社会主義がもっと共産主義のユートピアへ近づくと、国家そのものが消滅し、世界共産主義統一政府(=新世界秩序 New World Order)が作られます。これが「グレート・リセット」の言わんとする「アフターコロナの世界」だと私は解釈しています。
そこで、実際の歴史を振り返り、社会主義や共産主義はどうなったのか?「⇨」で示します。
⇨ 歴史上、社会主義国家は失敗している。ソ連の崩壊など、多くの社会主義国では経済が立ち行かなくなり、自滅に至った。
⇨ 共産主義国家はさらに破滅的です。中国では毛沢東が1966年から76年に文化大革命で粛清を繰り返したが、後に鄧小平が「最も厳しい後退」と評したほど国の発展を妨げた。また、カンボジアでは1975年にポルポト政権が原始共産主義に基づく国家を打ち立てた。が、この理想に共鳴した国民、特に知識層や医者などのエリート層から虐殺が始まった。すぐにポルポトに反対する人々への密告と虐殺が行われ、自国民同士が殺戮しあい、人口の3割が減少するという狂気と恐怖が1979年まで続いた。
以上のように、「グレート・リセット」で資本主義がチャラにされると、国民は困窮し、密告や虐殺で市民的な自由どころか全ての生活の基盤を失い、文明すら破壊されます。そんな環境で社会を支配し、富を独占したところで、卵(富)を産んでくれるニワトリを殺しまくるのですから、その富そのものがすぐに消えていきます。
「グレート・リセット」の骨頂では、世界統一政府下で無神論が規範となり、集団的洗脳が行われ、あらゆる信仰、スピリチュアルな心情や民族の伝統主義や宗教的慣習、祭り事は抹殺されます。人間が野獣的自由しか享受できない、まさに未開の状態に戻されることになります。そこでは、いかなる高度な技術があろうとも人類の繁栄はあり得ません。
コロナショックで現れた「グレート・リセット」が、コロナ終息とともに流行病のごとく、消え去っていくことを願います。
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