2025年、日本の「止揚(アウフヘーベン)」が始まるか?
2025年 新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
元旦に偶然BSテレ東「自給自足ファミリー」というドキュメンタリー番組の一部を見ました。私が見たのは、四万十川で志を同じくする仲間が集まり創意工夫を重ねながら自給自足を実践するリアルな暮らしでした。
彼らは近隣の人たちと助け合い、ゆるやかなコミュニティを形成して暮らしています。彼らの考え方の基本は「地球との共存」にあって、「自然を尊重し、その中で生かされている自分たちを尊重する」生き方を大切にしています。企業での出世やベンチャー事業で大儲けするといった世間的なサクセスとは異なる価値観をベースにしていて、私はこうした若い人たちの実践は素晴らしいと思います。
2025年から世界が大きく変わる中で、彼らの「地球を傷つけない生き方」はまさに「ネオ縄文」とも言える日本社会の原点にある思想と行動だと思うのです。こうした生き方こそがこれから日本が日本として生き残る道標となるかもしれません。
ちょうど10年くらい前に私は当GSニュースで「日本再生への道:森林里山こそが国土防衛」という対談記事を出しました。この記事では、ライフライン(水源、食料、熱源)の確保こそが国土を守り、自給自足など日本の再生には不可欠であると記しました。
日本再生への道 森林里山再生こそが国土防衛 - 林徳彦氏との対談 –
昨年中は、自給自足の村を作る運動に関わっている「エコビレッジ・ビルダー」や地域の再生などの活動で頑張っている様々なグループがあることを少しずつ知ることになりました。そうした中、信州飯綱高原で「いのちの森 水輪(https://suirin.com/suirin/)」を運営している塩沢さんとお話しする機会がありました。
塩沢さんは完全無農薬ファームで食料自給を目指しています。私はどのようにファームとそこで働く人々のコミュニティができたかと尋ねました。塩沢さんは「耕作放棄地を耕して村を作ろうといった上から目線ではコミュニティはできない。志を同じくする人たちがまず精神的につながり合って、それから具体的に田んぼや畑を耕して、作業を通して共同で暮らせるようになるというのが本筋なのです」と言われました。
塩沢さんが家族と共に始めた水輪は50年近く経って大きな輪になって世界に広がっています。もし我々が「宇宙の法則と一体感を持って生活をしてきた」縄文からの知恵に目覚め、原点に立ち戻り、共同体の絆を取り戻すことができれば、そこに日本再生とより次元の高い21世紀型のコミュニティ創造への道ができるでしょう。戦後民主主義で否定されてきた戦前よりもずっと太古の価値を弁証法的により高い段階に引き上げる哲学上の「止揚」作業が必要です。
2025年の世界では大きなパラダイムシフトが起こります。第2次トランプ政権は本気で「中国封じ込め」に動き出しています。かつてのジョージ・ケナンによる「ソ連封じ込め」とは異なり、トランプ政権はアジアにおける中国の覇権拡大を「拒絶(否認)する」政策(Strategy of Denial)を取ります。具体的には中国の勢力を「第一列島線」を超えないように抑止します。その戦略の詳細は、次期国防次官補エルブリッジ・コルビー著「アジア・ファースト:新・アメリカの軍事戦略」(2024年)に記されています。その戦略に日本は深く関わることになります。
実際に昨年11月から次期トランプ政権の足音が聞こえてくると、ウクライナ、シリア、そして韓国では大きな変化が起こりました。特にお隣の韓国では、米中露の狭間で国内政治に亀裂ができています。これはトランプ氏が目指す朝鮮半島の統一によって引き起こされる変化の先取りでもあります。私は5年くらい前に「消滅国家 韓国」という動画(YouTube)でその存在の正当性の危うさについてお伝えしました。
もし次期トランプ政権下で核を保有する強力な朝鮮民族の統一国家が成立すれば、中国と日本を牽制します。この朝鮮半島統一の前に、中国は台湾併合に動くか?あるいは尖閣諸島へ侵攻するか?おそらくその時になって初めて日本は自らの正当性の根拠(権力の源泉)を見直し、新たな国づくりの段階に入ると予想されます。今回は戦後のように経済的に米軍の占領下に置かれるか、あるいは中共の支配に置かれるか?「緩衝国家(バッファーステート)」として生き延びるかの二者択一の選択ではなく、自主独立の道を探る必要があります。
トランプ政権下ではそうした日本にとって稀有な機会が巡ってくるからです。トランプ政権の主要閣僚はビジネスライクのリアリストたちで、彼らはM&Aの企業買収のように経済合理的な国家運営を思い描く人たちです。もし我々も彼らの合理性の枠の中で交渉ができれば、良いディール(交渉)となるでしょう。我々が国内で左翼だとか右翼だとか言っているようなレベル感で時間をやり過ごす猶予はもはやないのです。
そのチャンスを生かせるかどうかは日本次第です。生かすためには、徳川家康が超武装国家の戦国時代を生き延びながら密かに練り上げたようなリアルで綿密な国家計画が予め必要です。そして家康の時代とは異なり、今回は鎖国という選択肢はないので、金融・経済、安全保障と軍事を含む総力を挙げた日本の「大戦略 グランド・ストラテジー」が必須となります。
その選択の時が迫るときに初めて、我々は日本国の富の源泉である万世一系の「家産官僚国家制」で1500年近くも積み上げられた巨大な国富(日本国民の税金)がどのように明治の近代化以降グローバリストたちの支配下に入るようになったのか、その仕組みを知ることになるでしょう。その気づきから本来のあるべき姿を取り戻し、そのビジョンを21世紀の日本のコーナーストーンに据え置き、そこから日本の「止揚」が始まることになるでしょう。
2025年1月8日(水)『2025年の金融経済、金利、株価、為替、地政学リスクはどうなる?』
参加費:1000円 主催:せたがやお金の教室
2025年、第2次トランプ政権がスタートします。米国の政策変更に伴う世界秩序と金融市場の見通しをお話します。後半の15分で、長期・分散・積立投資で、資産を増やしていく大井式「じぶんちポートフォリオ」の具体的なパフォーマンスをお示しします。
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