IMD競争力ランキング、日本企業の経営力は69カ国中65位 高市新首相誕生で、政治も経営もパラダイムシフトできるか?
例年6月にスイスの世界トップクラスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)が国別の競争力ランキング(The IMD World Competitiveness Yearbook)を発表します。
2025年は69カ国を対象とし、各国の競争力について「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4カテゴリー(合計20項目)の341の指標でスコア付けがなされました。そこには日本の凋落が明らかに示されています。
日本は総合スコアでは69カ国中35位、米国13位、中国16位。第1位から10位までの国は順に、スイス、シンガポール、香港、デンマーク、UAE、台湾、アイルランド、スウェーデン、カタール、オランダと、比較的規模の小さな国が並びます。ちなみにお隣の韓国は27位で日本より上です。
IMD競争力ランキングで日本は1989年から92年までは連続世界第1位でした。しかし、35年ほど経って35位までに転落しました。台湾、韓国、タイにも順位を抜かれてしまい、まさに「失われた30年」の結果です。
総合力評価の中身を詳しく見ると、日本における「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4カテゴリーの点数はそれぞれ詳しくご覧になれます。
https://imd.widen.net/s/vnxcr7n8gd/jp1page_wcy_2025
このカテゴリーの中で特に日本のスコアが際立って低いのが「ビジネスの効率性」です。「ビジネスの効率性」には5つの指標があり、それぞれの日本の順位を示すと「生産性と効率性 Productivity and Efficiency」(69カ国中56位)、「労働市場 Labor Market」(49位)、「財務 Finance」(13位)、「Management Practice 経営の実践」(65位)、「物事への態度と価値観 Attitude and Value」(56位)です。
指標の示すところは、総じて日本の企業経営では財務体質はそこそこ良いものの、生産性が低く、効率が悪い、従業員の態度や価値観は積極性を欠き(能動的でない)、労働市場は活気がない・・・
もっと具体的に言うと、経営トップが優れたリーダーシップに欠け、「事なかれ主義サラリーマンで、任期が終わればタダの人」、トップがそんな様子だから従業員も「その場だけ、今だけ、自分だけ」の保身に走り、現場も「やる気を失っていく」状況が蔓延している・・・こんなイメージです。
もちろん、日本でも優れた個別企業はあるものの、全体として世界的なレベルで見ると経営者の能力が経済規模に対して低すぎる。最近は外資アクティビストが株主を代表して経営改善を迫るといった事態が多々みられますが、そうした外圧がないと、社内は変われない、価値向上が図れないと言うのが本当なのかもしれません。
元ネスレCEOの高岡浩三氏は2024年のIMD競争ランキングの結果から、日本の経営者の能力は「世界ワースト3位」(週刊ダイヤモンド記事 9/17)で、以下のように明言しています。
“「失われた30年」で日本の上場企業の時価総額はアメリカの10分の1以下にまで衰退した。賃金も世界に大きく後れを取る今日の日本経済の惨状を招いたのは、日本の大企業やその経営者だ。”
https://diamond.jp/articles/-/372803
そうした状況にあっても日経平均株価は4万5千円を超えて上昇しています。そして石破首相が退陣し、10月4日に総裁選が行われます。
9月19日に高市早苗氏が「出馬演説」をしました。私は1985年にワシントンD.C.で高市さんとご一緒する機会がありました。当時は「ジャパンアズ・ナンバーワン」の時代。高市さんは松下政経塾で学び、その後「民主主義」の本場の米国で修行したいと志して、1985年に米国民主党のパット・シュローダー議員のオフィスで働いていました。初めて高市さんにお会いしたとき、彼女は「私は宰相を目指す」とキッパリと抱負を語られました。まだ政治家になる前の話です。今回の彼女の出馬演説を聞いて、初心貫徹してほしいと思います。
ところで、当メルマガ7月29日号で「国家理性」についてお伝えしました。
https://globalstream-news.com/250729-2/
今の日本でまともな「国家理性」を持ち合わせている政治家はいないというのが、国際政治アナリスト伊藤貫氏の意見です。伊藤氏は最近の動画(「伊藤貫の真剣な雑談:西欧の没落とトランプ政治の正体」9/13)で、政治家の言説には三つのレベルがあり、それぞれをPhilosophy(哲学)、Paradigm(パラダイム=枠組み)、Policy(政策)の3つのPで示しています。
Philosophy(哲学)にはその国の民族の持つ宇宙観(魂レベル)、宗教哲学、歴史観といった抽象度の高い思考と言説が含まれます。Paradigm(パラダイム=枠組み)は政治体制や枠組みといった構造をどうシフトさせるかという大きな方向性を示す言説です。具体的にパラダイムシフトとは、ソ連からロシアに国体が変わったとか、支配的な政党が変わり国の方向性が変わったといったレベル感です。Policy(政策)は最も具体的で政治家が日々取り組む課題です。
プーチンレベルの「国家理性」による統治はPhilosophy→ Paradigm→ Policyと落とし込んでいき、細かい政策については専門性の高い有能な閣僚を使いこなすといった感じです。
話を高市さんの「出馬演説」に戻すと、彼女は国民のために成長戦略に則ったたくさんの政策を挙げました。そして日本がどのような将来に向かうべきなのか、「方向性」を示しました。しかし、パラダイムシフトと「大和魂」を奮い立たせる価値観や哲学レベルの言説が弱かったと感じます。
1985年から40年が経ち、日本は凋落した。この責任は高市さんや我々60代の世代にあると思います。高市さん、三度目の正直で総理となるか?日本に再び希望に満ちた未来と国力を取り戻せるか?
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