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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

「攻撃的リアリズム」からみた日本の「コアコンピタンス」とは??

 11月7日の高市総理による台湾有事や存立危機事態に関する発言がニュースになりました。海外でも、この発言で日本の安全保障の脆弱性が認識され、さまざまな識者の見解が報じられています。その中で、地政学の権威でシカゴ大学教授のミアシャイマー博士のYouTube動画 ”Japan: The First Domino in the Fall of Western Power” 「日本:西側勢力衰退における最初のドミノ」は大変興味深いです。

https://www.youtube.com/watch?v=SOCcHk5G3To (11/23)

 ミアシャイマー博士の骨子については、私の11/27のニコ生放送(後半部分)で紹介しましたが、ここでは日本の置かれた現況を博士の「攻撃的リアリズム Offensive Realism」の観点から確認しつつ、俯瞰的に把握したいと思います。その上で、国際秩序が大きく変わる中で、日本が生き残るためには何をしなければならないか、日本の「コアコンピタンス」(絶対的優位性)は何かについて、考えてみたいと思います。

大井ニコ生(11/27): https://www.youtube.com/watch?v=mZ0oUp8Ah54&t=697s

 ミアシャイマー博士の動画の要点をまとめると以下のようです。

  • 日本は「人口減少」、米国への「戦略的依存」、中国からの「地政学的圧力」という3つの問題に直面している
  • 日本は安全保障を米国に、経済を中国に依存している。米中対立が激化し、トランプ氏がディールのタイミングを狙う中での高市発言(総理の立場として)は、経済的安定と長期的な安全保障の両方を損なうリスクがある

 さらに、博士は日本の主要閣僚は誤った自国認識に基づいて中国と対峙しており、この点が日本の脆弱性をさらに露呈させると警告しています。

  • 日本が対峙しようとしている中国は、もはや日本が対等に渡り合える相手ではなく、米国が競争相手として脅威とみなす大国である
  • 日本の指導者層は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた1980年代の強い日本のイメージに囚われているが、現在の日本はその輝きを失っている
  • 製造業の競争力低下と人口減少が重なり、日本は外部からの衝撃に対して非常に脆弱になっている
  • 政府の主要閣僚は、以上の現実を直視する必要がある。

 ではミアシャイマー博士の指摘する現実を直視した上で、日本はどうすれば生き残れるのか?米国に持って行かせる80兆円があるのなら、自前の国富ファンドで自身が生きるために必要な基本的なライフライン(食料、水、燃料)を確保すべきだと私は考えます。徳川家康が鎖国しても自己完結できる江戸幕府を築いたように、21世紀版の自律型の国づくりが必要です。

 具体的には、地域住民の皆さんが自然災害や危機的な緊急事態があっても生き延びられるように、コミュニティごとに水源を守り、食料備蓄、熱源確保、また他国の手に渡った水源を取り戻し安全保障上ナショナルトラストとして管理する。休耕地を耕し、健康に害のない食料を確保し、かつEEZ(排他的経済水域)内でレアアースや戦略資源を掘って掘って掘りまくる。EEZ内に他国が侵入しないよう専守防衛上の軍事的配備をしっかりやる。

 以上のことを実行するためには、GHQ支配から出発した戦後の農地改革や土地制度、あらゆる基本的な法整備や行政をゼロベースで見直すことになるでしょう。そして、そうした基盤作りがなければ、国民が自らの手で「憲法改正」を行うこともままならないでしょう。これはイデオロギーの問題ではなく、日本人が自分たちの国富を守り、持続可能な国体を持続させるために必要不可欠な作業となるでしょう。

 自立できるだけの物質的基盤が整い、「独立自尊」の精神性が確立すれば、強い「国民経済」が日本のコアコンピタンスとなるでしょう。日本人が日々充足した生活をおくり、共通の社会倫理や道徳、絆を保てば、子孫のために平和が続くようにと願うはずです。そしてそのためには、外敵の支配に対しては断固、「拒絶」しなくてはなりません。これは軍国主義ではなく、主権国家として当然の専守防衛です。

 今後日本が米中の間で「漁夫の利」を得て独立自尊を勝ち取るためには、トランプ政権による中国封じ込め政策に便乗し、外交上うまく立ち回る必要があり、かなりの叡智が必要とされます。高市政権にその任務が果たせるか??

 今更ながら、政府や政党、メディアに期待してはいけません。国民が自ら発信し、行動し、政権を動かさないとなりません。もちろん一度に何もかもはできません。まずは今の働き盛りの人たちが、10年後、20年後に日本が日本であることを強く望むことが必要です。その上で、人口8千万人規模でも経済成長を続けられる日本の強みとは何か、その戦略を考え、ビジョンを持つことが重要です。自己肯定と自立がコアコンピタンス創造の源泉です。日本が弱体化する緩衝国家から抜け出る道だと思います。

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