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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

トランプ AI革命を推進、ベネズエラで「掘って掘って掘まくれ」世界秩序はどう変わるか?日本の立ち位置は??

 新年早々、トランプ政権はベネズエラに電撃侵攻し、マデュロ大統領夫妻を拘束しました。このニュースでは国際法に違反しているなどいろいろとトランプ政権への批判もありますが、ここでは地政学と経済(特に資源)の点から、今回のベネズエラ侵攻の意義とこれからの情勢の先読みをお伝えしたいと思います。

 結論から言うと、今回のベネズエラ侵攻はトランプ政権の大戦略「中国封じ込め」の一環です。中国は2005年以降「拡大シルクロード構想」を掲げ、太平洋を超えて中南米に影響力を拡大し、パナマ運河の権益掌握を目指してきました。

 具体的には、中国はベネズエラに対して約600億ドルを「石油担保融資」しています。ブラジルには約300億ドルを融資し、石油会社ペトロブラスやインフラに注力しています。エクアドルではダムや発電所に約170億ドルを融資しました。(が、2016年に中国が建設した欠陥ダムが多大な自然災害を起こしました。)

 戦後、中南米は米国にとって「裏庭」でした。そこに21世紀に世界第2位の経済大国となった中国がBRICsをバックに乗り込んできた。中国は米国の「裏庭」にある原油や戦略的資源獲得するのが目的です。加えて、ベネズエラやその他の貿易相手国と人民元で決済し、ドルの影響を排除しようとしてきました。

 その上、中国はベネズエラをフェンタニルや麻薬関連の仲介地点として利用し、米国に麻薬戦争を仕掛けてきました。マデュロ政権は中国に対して相当に割安な価格で原油を輸出し、その供給が引き続き原油価格の下押し圧力の一因となりました。世界最大の石油産出国である米国がこれを見過ごすことはない。

 トランプ政権はデータセンター増設など、AIを中核とした新しい製造業の隆盛を目指しています。世界の情報を米国に集中し、データセンターで分析して優れたアウトプットを出し続けるためには莫大な電力を必要とします。そのためには原油、天然ガス、水といった資源、そしてAIを動かすための最新の半導体製造に必要な戦略的資源を確保する必要があります。それは国内にとどまらず、ベネズエラでも「掘って掘って掘りまくれ」で埋蔵量も確保する必要があるのです。

 以上、トランプ政権が目指す米国の「黄金時代」実現のためには、「裏庭」に埋もれた資源を開発し、米国への持続的供給が必要なのです。南北アメリカ大陸(西半球)を「米国」の領域とすると、世界の秩序はどうなるのか?

1. 米露を中心とした石油カルテルの形成

 2025年8月15日のトランプ・プーチン会談は歴史的な米露接近だったと記憶しています。私はその時に、北極海を中心とした北半球を米露の利益として確保するという合意が厳かに形成されたと考えています。これは資源豊富な北極海に進出する中国の「氷上シルクロード」を米露が抑止する意味があります。トランプ政権はグリーンランドを北極海の軍事上の要所として「買い付ける」計画をしています。

米露はサウジも含めOPEC全体として、今後石油生産と需給を通して価格安定化を目指す「カルテル」を形成すると予想されます。ロシアやサウジの経済にとって一次産品である原油の価格が安定することが重要です。

2. ロシアはユーラシアの「ハートランド」として存続

 ロシアはユーラシア大陸の「ハートランド」に位置します。ウクライナ戦争を経て欧州諸国の影響力が低下する中、米露関係を基軸にロシアは地政学上のランドパワーとして存続します。

北極点を中心とした北半球:グリーンランドは軍事上の要所

3. 日本は「自由と繁栄の弧」でアジアとの連帯を

 これまで、西半球は米国、北極海を中心とした北半球の上の部分は米露が覇権を有するという世界秩序を外観しました。残る東半球、特にアジア地域をどうするか?2006年に当時の麻生外相が唱えた「自由と繁栄の弧」があれば、「中国封じ込め」のパズルが完結します。その意味で、安倍政権の「クアッド(日米印豪)」の戦略的枠組は重要で、これを今のトランプ政権下で進化させる必要があるでしょう。さらに北東アジアとの連携も必須で、ロシアとは友好的な関係に戻すべきでしょう。

 戦後Jetroアジア経済研究所でこうした地域の優れた研究が積み重ねられ、インテリジェンスが高いレベルに達しています。そうした地に足のついたフィールドワークと研究実績が政府の戦略とシンクロして外交政策まで昇華されることを期待したいです。

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