潮目が変わるとき
7月5日に米国の失業率(6月)が発表になりました。米国の景気は上向き、FRBによる量的緩和(QE)も9月には具体的な出口戦略が出てきそうです。マーケットではQEが出口に向かうことで長期金利が上昇しています。
日本でもまた、長期金利が上昇に転じ、今後20年は今までの「失われた20年」とは異なる金利事情を想定する必要がありそうです。
ゼロ金利政策や大規模な量的緩和といった一連の金融政策は、経済を一時的に元気づけるカンフル剤の効果はあります。しかし、長くカンフル剤を打ち続けると、元気になれない体質になってしまいます。
さらに、日本では、金融危機が起こるたびに財政支出を増やし、モラトリアム法では体力のない企業を支援・救済してきました。バブル崩壊後20年で、政府の財政赤字は危機的レベルまでに膨れ上がっています。
長期金利上昇は、住宅ローンを始め企業の設備投資など融資を必要とする多くの経済活動に影響を及ぼします。金融機関が金余りの状況にありながらお金が回って行かない状況で金利が上昇すれば、経済活動に支障が出ます。景気先行きが不透明になるにしたがい、短期金利も上昇するとなるとさらにやっかいです。
潮目が変わるのは、日本だけではありません。この四半期(4—6月)で、米国債のリスクが高まり、金価格もこの百年で最大の下げ幅となりました。中国株も15%下げ、ブラジルレアルも8%下げました。
2013年後半から14年にかけて、日米間の格差が拡大します。米国ではシェール革命で国内のエネルギーコストが下がり、製造業が復活しています。その典型が米国自動車産業で、米国からの輸出台数は百万台を超えています。
さらに、米国では資源エネルギーの輸入が減少し、貿易赤字が減少しています。また、2014年にはイラク、アフガニスタンから撤退することから軍事費も削減されます。米国はこの10月から財政赤字削減を始めますが、貿易赤字、財政赤字は健全化に向かうと見られます。
米国に比べて日本は、高い資源エネルギーを海外から調達しなければなりません。貿易赤字は慢性的に増える傾向といえます。輸入インフレで食品やガソリンなどの物価上昇にもつながります。さらに、国内の有力企業は米国へ生産拠点を移すなど、製造業では空洞化が進むとみられます。
金利上昇で債券から株式へと投資資金がシフトする理由から株価が上昇するとしても、景況が好転しているとは感じられないでしょう。
日本はこれから参院選が始まります。すでにアベノミクスは過去のものとなりつつあります。金融緩和をしても中小零細にはお金が回らないという構造は、ゼロ金利にしたときと同じ課題なのです。このまま消費税を上げて行くと、過去の過ちを繰り返すのではないかと心配です。