JGBバブルとジャパンリスク
欧州危機の影響で、グローバルな投資マネーはギリシャやスペイン、エマージングといったリスクの高い市場からドイツ、日本、米国の国債といった安全な資産へシフトしてきた。日本国債(JGB)は海外からの需要で値上がりし、しかも円高が進み、ダブルでしこっている。いわば「JGBバブル」の様相を呈している。
6月17日にギリシャで再選挙。20日には米国連銀の金融政策が決定される。反緊縮を掲げる急進左派連合が勝利すれば欧州危機に拍車がかかり、失業率が改善しない米国ではさらなる金融緩和(QE3)実施の可能性が高まっている。
米国が金融緩和に踏み切れば、投資マネーは国債などの安全な資産から米国株やハイイールド債、不動産などのリスク・アセットへシフトすると見込まれている。こうしたグローバルな投資マネーの行動パターンは、繰り返されるだろうか?
多くの投資家同様、私も、欧州危機の収束には数年以上かかるとみている。ユーロという単一通貨の制度を止めて、欧州の金融サービス全体の仕組みを再編成するには大掛かりな手続きと労力、時間とコストがかかる。政治家や政策決定者は自分の保身から、火中の栗を拾うようなリスクを取らない。小心者は、危機がそのうちに去ってくれて、次の選挙での再選を望む程度の根性しか持ち合わせていない。
長引く欧州危機。とすれば、成長の見込めるマーケットは米国と中国で、中央銀行も政策決定者も実にプロアクティブだ。中国は7日に利下げを行ったし、グローバルな投資家は米中の速やかな動きを高く評価している。
20日、QE3はあるのか?11月の米大統領選を睨んで、一段の緩和を行えば、バーナンキFRB議長は中央銀行としての独立性を失うと考えるだろう。既に米金利は相当に低い。そして、この4月からロムニー候補への選挙資金がオバマ陣営以上に活発に集まりだしたと報じられている。オバマ大統領が再選できるかどうかは不透明だ。
QE3がなくても、私は円高基調がしばらく続くと思う。米国の景気回復が本格化す来年後半以降まで、ドル安のほうが米国にとって都合がよい。しかも、グローバルな投資マネーは円で借入れてドル資産へ投資を続ける。円は借入コストが安いし、インフレ懸念がないため、好都合なファンディング通貨として重要が高い。これが大きな円高圧力になっている。
円高で、日本の企業や個人の海外投資が活発である。外国企業の買収や海外事業での資本提携で、日本マネーは外へ出ていく。その一方で、日本の財政赤字削減や成長戦略への明確な指針が見えず、日本の政治的混乱に嫌気がさせば、グローバルマネーが日本から流出する可能性は常にある。日本には勤勉な国民がいてモノづくりの基盤がありながら、日本から資本が逃げていく、これが「ジャパンリスク」であろう。