超長期にみた世界経済 技術革新が牽引する成長と変化
四半世紀前の1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊し、その後、世界は根本的に変わった。どう変わったのか、そして、この先どう変わろうとしているのか。25年という超長期の観点から世界経済の動向を見直してみたい。
1989年には、ベルリンの壁崩壊に加え、中国の天安門事件、日本のバブル崩壊が起こった。米ソ冷戦が終結し、90年代に入ると元々軍事用の情報通信技術だったワールド・ワイド・ウェッブがインターネットとして民営化された。IT革命とグローバル化は米国流の「標準化」として世界に拡販された。IT革命はビジネスや企業経営・組織のあり方を変えたのみならず、ライフスタイルのあらゆる面で人々の行動や考え方にも変化を起こし続けている。
経済・金融面でも、21世紀の最初の10年間で市場はシームレスに影響し合うようになり、新興国経済(BRICs)はその恩恵を受けたが、リーマンショックが世界同時恐慌の危機に市場を陥れた。そこから7年たち、時代は少しずつ、ITに次ぐER(エネルギー)革命に向かっている。このところの原油安やシェール掘削ブームに陰りが見え始めたという報道も、ERの予兆のように感じられる。
20世紀は米国の時代であり、石油の時代だった。米国がリードした石油化学、自動車、航空機産業などの源動力は石油であり、中東産油国への覇権は米国の国益にとって重要課題だった。最近は、石油からシェールガスへのシフトも見られたが、再生可能エネルギーも含め動力の源泉が多様化し、産業構造そのものも変わり始めている。
IT革命の最大の勝利者であるグーグルCEOのペイジ氏はファイナンシャル・タイムズ紙のインタビューで「20年後、現在の仕事のほとんどが機械によって代行される」と語る。人工知能や自動化の技術革新で仕事の効率が10倍20倍も飛躍的に向上する。生活は良くなり、コストも安くなると同時に、人が行う仕事の47%以上が機械に置き換わるという。
当然ライフスタイルも大きく変わる。従来の重厚長大型のエネルギー需給システムもまた変革を迫られる。ちょうど大型コンピュータが40年近くかけて小型化、安価化、効率化を進めた結果、手のひらサイズのスマホになって多くの人たちが情報を共有し相互に交換するようになったように、資源エネルギーも同じ道のりを歩むだろうと筆者は予想する。
そうなれば、当然、経済はエコ化と生産性向上が相まってデフレ気味になる。ERで生み出される新技術や新たな商流は規制改革を促し、ライフスタイルを変えて行くだろう。人々は機械ではない人間の手によるモノやサービス、人間味や創造性に対して価値を感じるようになり、消費よりも使用価値に対してお金を払うようになる。究極の人間性の価値が問われる新しい社会が目の前に来ている。
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