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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

アザー・ピープルズ・マネー(OPM)で生き永らえるギリシャはユーロを脅す

このところトマ・ピケティ著『21世紀の資本論』が日本でもベストセラーとなった。社会の1%の人々が富を独占し、99%が貧困に陥るという極度の格差は、当然、市民社会の有るべき姿ではない。

しかし、100%の人々が「結果の平等」を享受できる社会主義は現実的だろうか。ギリシャ左派連合政権が目指す反緊縮財政政策で、格差のない社会は創り出せるだろうか。

 

ギリシャに関するマーケット関係者の見通し

 

多くのマーケット関係者は、ギリシャが社会主義に留まるのか、ユーロ圏に留まるのか、どちらか一方の選択を迫られ、瀬戸際にあると認識している。

また、ギリシャがユーロ圏を離脱すれば、そのリスクは未知数であり、予想を超えるような損失を招く事態を誰も望んでいない。

ユーロ圏加盟国の誰もが、恐怖のシナリオの責任を取りたくない。

だから、ギリギリの折衝でギリシャはユーロ圏に留まり、ECBが3月には再び量的緩和(QE)を実施するだろうと、マーケットは期待している。

実際この数週間で、QE期待感から欧州株上昇を狙う資金がユーロ市場に流入している。

 

ユーロを脅すギリシャ

 

仮にギリシャが離脱すれば、ギリシャでは通貨がユーロから新ドラクマ(ND)に切り替わる。多くのギリシャ国民は既に危機を予知し、海外へ資本逃避させている。

NDは信用力が伴わないので、どんなに新札を刷ってもユーロやドルと交換出来ない価値のない通貨になってしまう。

この場合、社会主義としてギリシャが再出発し、国民全員が公務員として平等に富の配分を受けたとしても、国民経済は成り立たない。このように、ユーロ圏離脱はギリシャ国民ですら望まない事態を招くだろう。

 

一方、ギリシャがユーロ圏に留まれば、ギリシャの借金を払い続けるのは主にドイツ市民である。

投機筋の間では「アザー・ピープルズ・マネー(OPM)」という言い回しがある。直訳すれば「他人のカネ」。儲かれば自分のものだし、失っても自分のふところは痛まない。

ギリシャがユーロ圏に留まり、社会主義を実現しようとすれば、ギリシャのようなOPM国が、「自分のカネ」でまともに成長しようとする資本主義国の富を吸い取るような「逆搾取」のドミノ倒しが始まるだろう。

「悪貨が良貨を駆逐する」というグレシャムの法則のように、ギリシャやスペインの急進的左翼政権が、これまでOPMで成り立っていた経済基盤を失わないためにユーロ圏離脱脅しの手口を今後、何度でも使うことになるだろう。そうなればユーロ自体の信用に関わることになる。

欧州主要国では、ギリシャに加え、ウクライナ危機や中東情勢、国内のテロ対策など問題山積である。

 

直近の日本株市場の動向

 

さて、直近の日本株市場の動向については、日本個人投資家理事で、友人の木村喜由さんが以下のようにコメントしている。

「年初から外国人が1兆4千億円ほど売り越すなかでの株価堅調は、日銀とGPIF(公的年金ファンド)の積極買いによるものだ。この背景にはドル円の上昇傾向もあるが、最近は貿易収支が大幅に改善し、本来なら円高圧力として働くはずだが、同じくGPIFと見られる外国株投資が年初から2兆円近くに及んでいるからだ。一方で債券利回りは上昇しており、GPIFが積極的にポートフォリオの組み換えに動いていることが窺われる。GPIFは昨年 10月末に新組み入れガイドラインを発表、株式と外貨資産の比率を大幅に引き上げた。本来なら目標の組み入れ比率達成まで2-3年掛けて、段階的に行うべきところだが、債券利回りがゼロ近い現状では、待っていても得るものはほとんどなく、それなら配当利回り2%近い株式を今のうち買った方がよいという計算が働く。今年は日銀が買うし自社株買いも増加しそうで、どうせ買うなら前倒しした方が得だ、という結論なのだろう。」

http://jaiicomi.jaii.org/2015/02/post-1237/

つまり、官製需給相場で株が上がるうちは良いけれども、どこかで勢いが失速する局面もある。日銀とGPIFが束になって、リスクを増幅させているように見える。日本もOPM政府が牛耳る相場となるか。投機家ならぬ投資家にとっても出口戦略、そして、欲張りすぎないタイミングが重要である。

 

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