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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

FRB利上げの可能性は2日の雇用統計に注目。一方で増え続ける米政府債務の膨張というリスク。

 英国中央銀行と日銀が金融緩和に動くなか、FRBは着々と緩和策の出口へと向かっている。8月26日に、イエレンFRB議長の利上げに前向きな発言が注目された。昨年12月に利上げを実施して以来、次の利上げのタイミングはいつか。

 フィッシャー副議長の強気コメントによれば、FRBは9月と12月に年内2回の利上げの可能性もある。直近9月の利上げ判断については、2日発表の雇用統計が注目される。雇用創出件数はこの2ヶ月間、予想を上回ってきたが、引き続き労働市場の改善が見られれば、6日以降マーケットは次の利上げを見込んだ展開となりそうだ。市場関係者は5日レイバーデイまでは、夏休み最後の週末をゆっくり過ごせるだろう。

 今週、相場は薄商いで方向性に乏しい中、円安・株高とリスクオンの状態にある。9月は株式相場で最も損失が大きい月となる確率が高いことを踏まえると、いつリスクオフに転じるか、注意する必要がありそうだ。というのも、不安材料として、外国人投資家による日本株の売り圧力が強いこと、そして、10月は大統領選挙で振り回されることから、グローバル投資家が利益確定を急ぐ可能性もある。

 FRBの政策においては気になる点がある。FRBは利上げに向かう一方、債券購入を続け、相変わらず市場に通貨を供給し、そのバランスシートを拡大させている。米国の財政赤字が2009年のレベルまで膨れ上がっていること、そして2014年6月以来のドル高が続いていることを考えると、雇用改善といったプラス材料を除けば、米国のマクロ経済はそれほど良好とは言えないのではないか。

 民間部門では、大統領選挙を控え、企業の経営者は様子見で、新規の設備投資などに積極的に動いていない。売上の伸びしろもやや縮小してきている。また、ドル高は米国内企業の輸出競争力を弱めるため、特に中国と日本に対してドル安を望んでいる。また、企業の借入が増え、財務レバレッジが高まるなか、金利上昇となれば、財務体質の弱い企業にとっては追い風となりそうだ。

 日米、そして英国に共通している点は、政府債務の膨張である。米ドル、英ポンド、日本円は合計すると世界の外貨準備の7割を占めるが、この三国が債務返済のためにインフレを起こし、自国の名目成長率を上げようとしている。ところが、英米では政府債務の対GDP比が約百パーセントに達しており、日本では230パーセントと極めて高い。このままでは、インフレ率を上げようと中央銀行がいくら通貨量を増やしても、政府債務危機を避けられなくなる。日銀の出口戦略はまだ見えていない。

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