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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

戦時の国防生産体制(DPA)突入 市民的自由は守られるのか

 米国の26日(木)、新規失業保険申請件数が328万件と過去最多を記録した。マンハッタンでは商店やレストランが閉鎖され、無産階級の人たちは行き場を失い、ウォール街の連中はハンプトンやマーサスヴィンヤードのサマーハウスに逃避している。

 大都市ではウィルス感染拡大がオーバーシュートし、マンハッタンのジャビッツセンターは野戦病院さながら、ロサンジェルス沖には海軍の病院船が待機している。今、人工呼吸器が不足している。

 米国は戦時下の生産体制に入った。FT記事(28日付)によると、トランプ大統領は、ゼネラルモーターズ(GM)に対して、人工呼吸器を生産するように命じた。1950年代の国防生産法(Defense Production Act :DPA)の復活である。

https://www.ft.com/content/9328d358-1588-4498-97d9-0dd43255a076

 GMはこの国家の緊急事態に対応し、過去に解雇した労働組合の労働者1000人を雇い、フル稼働で人工呼吸器を生産する。トランプ大統領から見れば、米国に製造業が生産拠点を戻し、サプライチェーンを復活させるチャンスだ。

 一方、このDPAを根拠に、民間企業に対して大統領が何を優先的に生産すべきかを強制する権限があるのだろうか。DPAに無制限の強制力はないし、合衆国憲法に対して違法性はあると思う。

 ウィルス世界大戦が始まり、国家安全保障上、米国は戦時下、総力戦の体制になりつつある。連邦政府があらゆる経済活動を支配し、FRBが無制限の資金提供をし、金融システムをコントロールする。戦時下、国家にあらゆる権力が一時集中するのはやむを得ないと議会が認めたとしても、一時的で済むだろうか。平時に戻れば、また元どおりになるだろうか。そうでなければ、資本主義経済は壊れ、市民的自由は永遠に奪われてしまう。

 日本では年度末31日に向けて、日銀はETF購入で株価を支え、なんとか1万9千円台に乗せたいところだ。しかし、4月以降、「自粛+自主規制=強制」的に、商店やレストランが営業短縮に動けば、消費は急激に冷え込む。派遣社員は仕事に行けなければ生活できないし、マンハッタンと同じような現象が起こるだろう。株価下落は4、5月と、まだまだ続くと見ておいた方がよさそうだ。

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