戦後75年「戦後レジーム」終焉 コロナ禍で「新しいコミュニティ」創出を
戦後75年、終戦記念日。「いつもと違う夏休み。コロナでお盆に帰省できない人々が、グランピングを楽しんでいます」とTVニュース。コロナの影響で、田舎でのお墓詣りを取りやめ、夏祭りや花火大会も中止になってガッカリした家族が、密にならないよう気をつけながら、アウトドアを楽しんでいる。
この異変は今年だけなのか。もし何年も続けば、日本の伝統や習慣が薄れて行き、ついには継承する人がいなくなり、やがて失われてしまうのではないか。少子高齢化が止まらない日本、コロナ前でも皆がそうした危機意識を持っていたと思う。そして、コロナ禍の今では、そうした意識がより強くなったと、私は感じている。
効果的なワクチンを誰もが入手できるようになるにはあと1年はかかると言われている。それまでは、感染しないように「社会的距離」を取り、リモートワークも増え続ける。この状況が恒常化し、思ったよりも速いスピードで人との絆が薄れていくだろう。会社や地域社会から分断されたような環境に置かれて、孤独に苦しむ人や家族が増えるだろう。
これは、日本だけの現象ではない。世界で同時多発的に起こっている問題である。米国では、住宅から立ち退きを迫られホームレスになる人が3千万人から4千万人いると報じられている。失業者は政府からのコロナ特別給付金(週600ドル)や様々な手当てのおかげでこの数ヶ月をサバイバルしてきたが、支給もそろそろ打ち切られようとしている。家を失い、無一文で放り出された人々は、どうやって生きていくのだろうか。
米国では秋口から年末にかけて事態の悪化が予想される中、11月の大統領選挙が重なる。この9-10月は社会不安が高まり、何か不測な事態が起こる政治リスクが高まる。当然、不透明さを嫌う株式相場や金融市場でもリスクが高まる。
日本でも悪質な詐欺や犯罪が増えている。加えて、外から見えにくいところでDVなどの陰湿な暴力、麻薬中毒、アルコール中毒、オンラインゲーム依存症、鬱などが増加していくと予想される。
なんだか暗い話ばかりだが、少し明るい話題はというと、テレワークの普及に伴い、自然豊かな郊外に住んだ方が家族にとって安心だと感じて一極集中の東京から移住を考える人が増えてきたことだ。これからは家族、そして自然とのつながりを大事にしたいと、コロナ疲れで今までの生活様式を見直す人が増えている。
しかし、移住はグランピングのような一過性のイベントではない。コミュニティの一員として、周りに人たちと長期にわたり絆を築いていかなければならない。そのためには、共同体のルールを守り、何らかの役割と責任を担い、コミュニティに参加してゆく必要がある。これは、言うは易しだが、コミュニティ運営は企業経営よりも難しいと私は思う。
5GやIoT、自動運転電気自動車、スマートシティなど優れた技術を集め、「新しいコミュニティ」のインフラと組織・統治形態を模索するときに来ている。「新しい働き方」や「新しい生活様式」を始める時、日本の伝統や文化、生活習慣、家族のあり方など、その優れたエッセンスを21世紀にふさわしい形で再構築できればよいと思う。
私は長年「森林再生ファンド」に投資してきた。「日本の森林里山を守る」ESGファンドで、マイクロファイナンスに近い。なぜ「森林里山」か。生態系を守ると言う意味もあるが、もっと重要な点は、日本の国体や安全保障、国土防衛そのものが、「里山」を中核とした共同体にあるからだ。
戦後75年。日本を戦前に引き戻すことは出来ないが、再び戦争に巻き込まれないためには何をすべきか。私の対談「日本再生への道」をぜひお読みください。終戦記念日に合掌。
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