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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

すでに戦時下 経済はL字、株式相場はK字回復か?

 今年のジャクソンホール会合(8月27-28日)はオンラインで実施される。この会議でパウエルFRB議長の発言が注目されている。マーケットは、当面ゼロ金利政策が持くと予想している。

 4−7月までの緊急コロナ対応が終わり、ウィズコロナが新常態となるなか、現状はどうか? 

 失業率は高止まっている。ワクチンが国民に行き渡るまではウィズコロナが続き、年末にかけて大量失業の第2波がやって来ると予想される。特に、失業保険申請件数が多い州は、カリフォルニア、ジョージア、フロリダ、ニューヨーク、テキサスの順で、年収4万ドル未満の3割が失業と推定される。

 こうした大恐慌よりもひどい状況にありながら、政府の「サバイバルマネー」バラマキで、国民の多くがなんとか命を繋いでいる。もはや景気がV字回復するシナリオは期待薄で、2022年年末まではL字が続くと見るのが妥当であろう。

 一方、株価はコロナ前の水準に達するV字回復と報じられている。フィナンシャルタイムズ紙(FT 8/21/20)記事によると、米国株価は最高値を更新しているが、セクター別に見ると「K字」回復だと述べている。下のグラフでは、Kの字に示されるように、勝ち組と負け組の上下に分かれている。具体的には、ひきこもり消費を支えた一般消費財とテクノロジー関連セクターが上昇し、その他のオールドエコノミー関連、特にエネルギー、金融、公益事業、不動産が二桁で下落している。

 ところで、このエネルギーセクターの大幅下落に反応して、ダウ平均株価指数の入れ替えが8月31日に予定されている。なんと、エクソンモービルが指数の構成銘柄から外され、より成長性の見込まれる銘柄が組み込まれる。こうして、米国株価指数は臨機応変に、人為的に、構成銘柄が入れ替えられ、常に上昇を目指すことになる。

外れる銘柄: エクソンモービル(XOM)、ファイザー(PFE)、レイセオン(RTX)

新規組入銘柄:セールスフォース(CRM)、アムジェン(AMGN)、ハネウェル(HON)

 この先、株高はいつまで続くのか?FRBは過去3-4ヶ月でバランスシートを3兆ドルも拡大したが、かつてない大規模な量的緩和(QE)とゼロ金利が続く限り、あふれたマネーは成長性の高いセクターに向かうだろう。

 ジャクソンホール会合を前に、ヘッジファンドのレジェンド、レオン・クーパーマン氏は、ブルームバーグのインタビューに応じ、現況を「合理性のないマーケット」と評し、自身のファミリーオフィスでは社債の保有分をほぼゼロにしたと発言した。

 さらに、「リーマンショックから約10年は強気市場だった。右上がりの相場ではヘッジの必要がなく、ヘッジファンドは苦戦した。しかし、この相場環境ではヘッジファンドは意味がある」と述べた。

 そして、ソラリ・アドバイザーズのキャサリン・フィッツ氏は、FRBのQEを評し、「我々はすでに戦時下 “War period”に入った、今は第三次世界大戦中」と指摘する。確かに、戦争になれば政府は軍票(通貨)を刷りまくり、あらゆる物資の調達を行う。その結果、戦後には物資がなくなり、ジャブジャブの通貨は価値を失い、ハイパーインフレが起こる。戦後の日本もそうだったし、今や破綻国家のレバノンもそうだ。

 しかし、これからはこれまでの歴史とは全く異なるだろうとフィッツ氏は述べている。その理由は、世界が新しいデジタル通貨(Central Bank Digital Currency: CBDC)体制に移行すると予想している。

 今が「戦中」にあるとすると、「戦後」には全く新しい経済、金融システム、そして、世界秩序が創り出される。

 その際に、日本は生き残れるのか?2016年に著した『円消滅!』にならないよう、確固たる戦略を持つべきだろう。

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