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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

コロナ禍での大統領選、ウォール街バイデン支持の狙いは?DXでディストピアがやって来るのか?

 主要メディアは、バイデン優勢を報じている。10月にはバイデン氏はトランプ氏よりも多くの選挙資金を集めている。その裏には、バイデン側について稼ごうとする資金の出し手の目論見があるはずだ。ウォール街は次期大統領バイデンに今から何を期待しているのか?

 トランプ政権下、株価は上昇し続けてきた。コロナショックで経済活動が遮断され、失業が増えても、非接触型のFAAGM(フェイスブック、アマゾン、アップル、グーグル、マイクロソフト)を中心に株価は続伸した。ウォール街の資本家も大いに利益を得たはずだ。無論、FRBが前代未聞の緩和策を実施したおかげであるが。

 そのFRBのパウエル議長が8月末に、インフレ目標に関する政策変更を公表した。インフレ目標2%を設定し、失業率4.0%達成のためにはインフレ率2.5%を容認するという。この政策変更で、債券相場が一時混乱したが、FRBは「インフレを起こすためにすぐにゼロ金利を解除するわけではない」と表明し、金利上昇を懸念するマーケットをなだめようとした。その効果があって、マーケットはゼロ金利と量的緩和が続くと判断し、相場には安心感が広がった。

 さて、インフレ2%を実現し、景気を維持するには、12兆ドルを投入する必要があるとドイツ銀行は試算している。それに応じるかのように、バイデンは7兆ドルもの財政刺激策を掲げ、インフラ整備など公共投資を実施し、現行の失業給付手当を「ユニバーサル・ベイシックインカム」にグレードアップさせようとしている。

 9月には、バイデンと民主党議員がFRBに対して、「就職、賃金、豊かさにおいて人種格差を積極的に是正すべき」と提言し、それを可能にするよう組織の変革を求めた。こうした態度から、仮にバイデン政権が誕生すれば、FRBの独立性を反故にしてもさらなる量的緩和を続けさせようとするだろう。

 確かにFRBは当面、金利を上げるつもりはないだろうから、本当にインフレがやって来る時には何の予防策もない。エコノミストやジャーナリストの中には、近い将来ハイパーインフレを懸念する声がある。

 仮にバイデン政権が誕生した場合、まず法人税率の引き上げなど増税を実施するだろう。増税で株価は冷え込むと予想されているが、その後には巨額の財政支出(ニューニューディール)が株価を押し上げると、ウォール街は見込んでいる。

 しかし、そんなにうまく行くのだろうか?コロナ禍で米国でも中小企業は銀行からの融資がなかなか受けられず、破綻や廃業が増え、多くの雇用が失われている。この機に、バイデン陣営は、週に千ドルの手厚い支給を提供しようとしている。こうした貧困層への対策に賛成する人たちも大勢いる。

 ただし、これだけの支給があれば多くの低所得者層はまともに働かなくても暮らせるので、自発的に働かない人たち、つまり「永久失業者」が増えると予想されている。これで失業率は低下するかもしれないが、その代わりにロボットやAIが働くのだろうか?

 米国の経済の大部分は中小零細企業で成り立っており、その職場がなくなれば勤勉に働く中間層も崩壊し、コミュニティが壊れ、ロボットと一部の支配層だけの社会がやって来る。これがDX(デジタル・トランスフォーメーション)の先にあるコロナ後の経済体制なのか?このディストピアの近未来は、日本にもやって来るのか?

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