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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

金利上昇がもたらすインパクト

 2月5日の週から株式相場では乱高下が続いている。その原因となったのが金利上昇である。

 金利上昇で相場の流れが変わる。1989年年末から始まった日本のバブル崩壊も、日銀の利上げや土地融資の総量規制が引き金となった。景気循環の点から、米国経済の好調さはすでにピークに達し、2019年後半にはリセッションが予想されているが、連日の株価下落から、リセッションの前倒しも警戒される。

 米国債10年物金利が上昇している。長期金利は商業用不動産投融資、個人向けでは住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードローンなどの貸出金利に影響するので要注意だ。こうした融資は、米国の市中銀行の貸出の約三分の一を占め、不動産市場へのインパクトも大きい。

 住宅ローン金利が上昇すれば、毎月の返済額が増えて家計を圧迫する。返済できない人たちが増えれば銀行の不良資産が増える。また、政府レベルでは、トランプ政権が大型減税、大型インフラ投資を掲げているが、その原資が借金だとすると、金利上昇局面では公的債務の借入コストが上昇する。財政赤字が益々増えることになる。

 ここ数ヶ月マーケットで乱高下が続くと追証に追われたり、借り株の調達できなくなったりなどトレーディングで損失を重ねる人たちが増えてくる。彼らが流動性の高い株式や債券を売り浴びせると、やがて流動性の低いデリバティブや仕組債などにも売り浴びせが広がる。このようにマーケットでリスクが増幅していく現象はリーマンショックの手前でも見られた。

 加えて長短金利が逆転し、利回り曲線が右下がりになる(逆イールドカーブ)場合、銀行の収益が損なわれ、貸し剝がしなどの信用収縮が起こる。日本のバブル崩壊時(1989-91年)にも逆イールドとなり、その後の実体経済への悪影響は大きく、リセッションの谷が深くなった。

 このように、金利上昇は単なるインフレ懸念ではなく、金融市場から実体経済に至るまで、大変大きなインパクトを与える。これからはリスクに備え、資産防衛に徹する時である。

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