グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

アフターコロナと「永遠のゼロ」、そして、ゾンビ

 リーマンショック以降、主要先進国の中央銀行ではゼロ金利を継続中です。そして、昨年のコロナショックで、公的資金の注入が相次ぎ、政府の支援金が企業にも付与され、特に欧州では、この状況が長く続くと、「国が日本化する Japanification、企業がゾンビになる Zombification」という懸念が出てきています。一体「日本化=日本のようになる」と何が困るのでしょうか?

 日本は「課題先進国」と言われています。世界に先駆けての急速な少子高齢化といった課題もありますが、今話題になっているのは、日本のバブル破綻以降の「失われた30年」です。この30年に及ぶ日本経済の衰退ぶりを目の当たりにして、欧米の政官財のトップは「日本のようになってはヤバイ」と思い始めています。

 オーストリア学派の経済者が集う「ミーゼス研究所」では、優れた日本経済分析を行っています。Gunther Schnabl & Taiki Murai共著(2月25日付記事)、”Japan’s Well-Fed Zombie Corporations”では、日本のケーススタディから「大規模な金融緩和と財政刺激策は短期的には経済を金融危機から救い出し安定化させるが、長期に続ければ、経済を麻痺させ、生産性を低下させ、成長を台無しにする」と結論づけています。

 「日本の失われた30年」をどう解釈するか、私なりに記事に沿ってポイントをまとめてみます。

後手後手の政策

 日本の貯蓄残高は1991年には46.9兆円(GDPに対する貯蓄比率 15%)でした。が、2019年には14.4兆円(同比率 5%)と、7割も減少しました。これだけ国民の貯蓄が減ると投資も減少し、成長の原資が削がれます。しかも、2014年には消費税が5%から8%に引き上げられ、貯蓄比率は一瞬マイナスに転じました。ここに、政策の度重なる過ちが見て取れます。時系列で振り返ります。

 1997-8年に日本長期信用銀行、日本債券銀行、山一証券、三洋証券が破綻するなど、深刻な金融危機に見舞われます。バブル破綻以降しばらく蓄積されてきた不良債権がニッチもサッチも行かなくなります。当時の大蔵省は公的資金の導入がゴテゴテになったと批判されました。

 1998年以降、賃金上昇は抑制され、実質賃金は下がり続けています。個人消費は増えず、いわゆるデフレ不況が深まっていきます。さらに2008年のリーマンショック、2011年3月11日の大震災と津波、福島原発事故が追い打ちをかけます。12年12月に民主党から自民党へ政権が移り、13年からのアベノミクスで少し明るさが見えてきたところで、消費税率の引上げが、14年と19年に2度も実施されました。これでは、個人消費が先細り、貯蓄を切り崩す人が増えていきます。日銀の金融緩和や財政支出の空回りが続きます。

銀行が優良企業を潰してゾンビを増殖させた

 2008年9月のリーマンショック直後から、銀行による貸し剥がしや貸し渋りが起こりました。私の知人は、創業以来33年間ずっと黒字経営してきましたが、リーマンショック直後にメインバンクから貸し剥がしされ、会社更生法適用になりました。創業者でオーナー経営者のその知人は、その後3年かけて会社を立て直しましたが、「33年かけて成功させた会社をたったの3ヶ月でメインバンクに潰された」と今でも悔しそうに話しています。

 この貸し剥がしの中心人物は銀行の本社常務まで出世しています。実際、メガバンクは自分の身を守るために、黒字経営で回収見込みのある中堅企業から先にどんどん資金回収し、不良債権処理に備えていたのです。当時の亀井金融担当大臣による「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」が施行されたのは2009年12月で、知人の会社はこの法案を待たずに同年2月に上場廃止されました。

 モラトリアム法は時限立法で当初2011年3月までとされていたが、13年3月に終了となりました。政府は、企業が破綻した際に貸し倒れ債務の4割を補填するなど銀行に裏からカネを回して、多くの中小企業の返済猶予や信用保証などの救済支援を行いました。その4年近い間に「モラルハザード」が起こりました。本来ならば撤退すべき企業がずるずると借金を抱えたまま生き延びてしまったのです。長く続いたモラトリアム法は、ゾンビ企業を増殖させました。

低い生産性、低い賃金、低い成長率

 ゾンビ企業は、「開店営業しているが毎月の利払いがやっと、売上げは増えず、借金を全額返せる見通しはなく、新規投資もできない」という状態にあります。ゼロ金利が続けばなんとか生きていけるものの、新規の設備投資もなく、古い体質のまま内向きでイノベーションは起こらず、生産性もどんどん落ちていきます。当然、賃金は上がらず、全体として低迷したままです。

 欧米は、平成の時代に日本経済が辿った凋落の一途を研究してきました。そして、アフターコロナで、FRBはゼロ金利から転換する姿勢を明確にしています。そうしないと、「永遠のゼロ」に縛られた日本のようにモラルハザードとゾンビが跋扈し、本来の成長の芽が潰されていくからです。

 問題は日本です。今は政府からの給付金や支援で生き延びている企業も、アフターコロナでどのように次の時代を生き抜いていけるのか?コロナ禍ですが、次の時代を見据えて産業構造や企業経営、働き方などすべてを刷新していくチャンスかもしれません。

ソース Japan's Well-Fed Zombie Corporations

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