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米国はソ連のようになっていく?

 前回、ソ連の崩壊について書きました。このままバイデン政権が「大きすぎる政府」を目指すと米国がソ連のようになっていくと心配したからです。

 ちょうど5月6日付のエポックタイムズ誌に ”Are Americans Becoming Sovietized?”(米国人はソビエト化するのか)という記事が掲載されました。著者Victor Davis Hanson氏は、カリフォルニア州立大学の古典学の名誉教授で、軍事史をスタンフォード大学でも教えています。その高い知性から、ハンソン氏は米国がソ連と類似した10の兆候があると言います。

 ソ連といえば、私はかつて、零下20度の凍りつくような冬の日に、パンや卵を買うために何時間も店の外に並ぶ市民の姿をニュースで見て、衝撃を受けました。豊かな米国がどうしてソ連のようになるのか?ハンソン氏の記事の内容「10の兆候」を以下、私なりにまとめてみます。

  1. ソ連では、軍隊やいかなる官僚組織においても社会主義イデオロギーに忠実である人が評価される。米国でも「人種差別的国家」と肯定することがキャリア形成では重要視されている。
  2. ソ連で正しい新聞は国家が認める「プラダ」だけ。米国でも主要メディアは「プラダ」のようだ。ハーバードの研究によると、米国では2017年に報道された主要TVによる「トランプ大統領の100日」で90%がトランプを否定した。
  3. ソ連では、共産党員とゴマスリ人間どもがイデオロギーに反対する人々を探し出す。米国でもCNNがバイデン政権と協力して個人のネット活動を監視しようとしている。
  4. ソ連の教育は啓蒙ではなく、若者を洗脳し、政府に従わせるためのシステムである。米国の大学でも、「多様性」という皇帝(ツアー)がカリキュラムや教員、スタッフを管理しようとしている。
  5. ソ連では甘やかされたエリート(ノーメンクラツーラ)が支配する。米国の著名な自称社会改革派のタレント、オプラ・ウィンフリー、オバマ家の人々やザッカーバーグらが影響力を持つ。だが、その言動とは異なり、彼らはビバリーヒルズなどで豪奢な暮らしをしている。
  6. ソ連は歴史を都合の良いように書き換えてきた。米国でも歴史的モニュメントを破壊したり、出版を拒否したり、都合の良いように歴史を作ろうとしている。
  7. ソ連では恐怖が人々を支配し、密告者が潜在的に敵対する相手を根こそぎにすることで報酬を得てきた。米国でも体制に協調しない人に差別主義者のレッテルを張るために、ネットでの密告と告発が横行している。
  8. ソ連では法廷はイデオロギーに従う場である。社会主義では「法の支配」はなく、政治的に正しい(ポリコレ=Politically correct)かどうかが判断基準となる。CIAやFBIもポリコレの手先となればKGBのようになってしまう。
  9. ソ連ではポリコレにふさわしいものに賞が与えられる。米国でもエミー賞やグラミー賞といった各種の賞に輝く作品が必ずしもベストとは限らない。それはポリコレであるゆえの賞だからだ。
  10. ソ連では自由を弾圧しても許される。それどころか、弾圧者は労働者階級のヒーローとして正当化される。米国でも、「平等」を掲げ、差別をなくすための思想の再教育、強制的な謝罪、キャンセルカルチャー(ある一面だけ切り取って全体を否定する誹謗中傷)が広がっている。その行き先にあるのはニヒリズムである。

 ハンソン氏の記事を読み、私はある言葉、”Nonconformist”を思い出しました。宗教革命時に、ピューリタンは当時の絶対王政の国家体制に従わない者として、こう称されました。そして、Nonconformistたちが宗教的自由を求めて、メイフラワー号で新大陸に渡り、建設した国家が米国となったのです。

 バイデン政権は、Nonconformistを排除する仕組みを作ろうとしているのでしょうか。そうであれば、米国は米国でなくなってしまうでしょう。その前に、米国の保守本流の人々が立ち上がれば、再び革命が起こるかもしれません。

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経由 Are Americans Becoming Sovietized?

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