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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

「創造的階層」は没落するのか?”The Fall of the Creative Class”

 コロナウィルスから1年以上経ちました。昨年4月12日の動画(https://www.youtube.com/watch?v=Bs0G065eUN8)で、私はコロナで起こるであろうパラダイムシフトについてお話しました。

 趣旨をまとめると、自宅からのテレワークで働き方が見直される、身近な家族やコミュニティが大切になる、オフィスの必要性が低下し、商業用不動産価値が下がる、経営者から見れば誰が本当に会社のための価値創造をしているか人事評価が明確になる、今ある資産を守り、将来に向かって自己研鑽しよう・・・こんな感じです。

 コロナ終息まではまだ道半ばですが、テレワークはしばらく続いていますし、企業や従業員の働き方や考え方は変わってきたようです。少なくとも米国では。

 米国では、ワクチン接種が進み、夏に向けてレストラン、美術館や劇場が再開し、ロックダウンでゴーストタウンになった都市は活気を取り戻そうとしています。しかし、ビジネス街は様子が異なります。

 ブルームバーグ記事によると、米国主要都市のビジネス街ではコロナ前の27%しか従業員が戻ってきていません。下のグラフは、2021年5月5日付データです。ニューヨーク市では16.3%しか従業員が会社に戻っていません。特にマンハッタンへの地下鉄や鉄道による通勤で感染を恐れる人が多いという事情もあるようです。

 これから先、コロナ前の日常に戻るのかどうか。アマゾン、ブラックストーン、JPモルガンといった大企業は、大部分の従業員を会社に戻すと言います。テレワークは残すものの、企業文化を保ち、従業員の一体化と雇用促進のためにはオフィススペースをそれほど減らさないようです。

 コロナ後も労働全体の21.3%ほどはテレワークで続けられると予想されています。では、従業員は実際、どのようにテレワークしているのでしょうか。テレワーク中の22%の人々は、実際には家の外、例えば、コワーキングスペース、カフェやアウトドアスペースといった、会社でもない家でもない「第3のスペース」で働いていると言います。

 今後、「創造的階層 Creative Class」と言われるプロフェッショナル(エンジニアや研究者、教育者、アーティスト、小規模経営者など)は、今までのように一箇所のオフィスに集められて仕事をする必要はなくなります。彼らは、新しいネットワークやサービスを使いこなし、よりフレクシブルな働き方を選べるようになります。

 そうなると、むしろ企業の方が、彼らに出社してもらうために、よりエコな共有スペースやエクササイズルームを完備したり、月曜と金曜には従業員同士がソーシャライズできるような企画を用意するといった工夫が必要です。この場合、ワインやチーズを従業員に振る舞うといったやり方では魅力がありません。生活の質を高められるような大学院レベルの知識や教育、ウェルネスを提供し、従業員との一体感を高めるような新しいブランドを企業が構築する時なのです。

 さて、「創造的階層」については、The Rise of the Creative Class”『新クリエイティブ資本論』(リチャード・フロリダ著)に詳しく論じられています。ちなみに、創造的階層に当たる人々は米国では約4000万人、米労働人口の三分の一にあたります。

 この翻訳本が出版された2011年には、まだコロナやロックダウン、SNSを利用した世論操作や全体主義的なポピュリズムの台頭はなかったです。2020年以降、”The Fall of the Creative Class”(創造的階層の没落)にならないようにと願うばかりです。

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