パンデミックが全てを変えた ディストピアに向かう世界
今、世界中でデルタ変異株の感染が広がっています。どうも世界が同時多発的にディストピアに向かっているように感じられます。
ディストピアとはユートピア(理想郷)の反対で、隠れた独裁や横暴な官僚システムが支配する社会です。ジョージ・オーウェル著『1984』で描かれるような、思想統制で個人が洗脳され、プライバシーや人権が失われた社会です。
ディストピアに最も近いのは中国かもしれません。中国では21世紀版「文化大革命(文革)」が進行中です。
20世紀の文革は、毛沢東が共産党内部の権力の座を奪回するために仕掛けた政治闘争で、1966年から76年までの長きにわたりました。若者が毛沢東思想に染まり、紅衛兵として国中を嵐のように駆け抜けました。この間の大規模な政治的混乱で国民経済は疲弊しました。文革がいかに普通の人々の生活を壊したか。中国映画の名作「活きる」(イーモウ監督、1994年)では、生活者の目線から市井の人々の苦悩が細かく描かれています。
現在、習近平は自身の権力維持のために、資本市場と国民経済を壊すことも厭わない勢いで、反対勢力(旧勢力の江沢民派)の資金源を断ち、彼らを一掃しようとしています。
実際、習近平は、米国株式市場から資本を引き上げています。アリババの香港市場上場廃止や滴滴(ディディ)、教育関連IT企業への締め付けによって、旧勢力と結託したウォール街の親中投資家に喧嘩を売っています。皮肉なことに、トランプ大統領が目指した中共資本の米国資本市場からの締め出しが、現実のものとなってきました。
このまま独裁者、習近平が「文革」を進めると、民間企業が国有化され、資本市場では中国株が暴落し、世界の投資家が大きな損失を被ります。香港に置いてある海外のオフショア・マネーにとっても危機です。
中国は、文革の失敗後に鄧小平が「開放政策」に転じ、21世紀の最初の10年で「世界の工場」に上り詰めましたが、間も無く中国の繁栄は終焉を迎えようとしています。国民はより強い言論/思想統制を受け、香港への抑圧、ウィグルなど少数民族へのジェノサイドは続くとみられます。
さて、米中対立の片側の米国はどうでしょうか。バイデン政権はデルタ変異株の恐怖を煽り、再びロックダウンへ動きそうです。ちょうど、7月31日に「立ち退き猶予(モラトリアム)」の期限が終わりました。昨年のロックダウンで失職し住宅ローンや家賃を払えない人々への支援を延期すると同時に、国民に支給金を配布する、コロナショック後の一連の政策を、デルタショックで再び繰り返す可能性があります。ちょうど、ワクチンも接種後から半年で効果が薄まってきます。第3回、4回のワクチン接種を国民に促す一方で、接種に反対する人々への締め付けも強化されていくとみられます。
米国では昨年来、格差拡大、無産市民層の貧困化、メディアによる政府への批判を封じ込める動きが強まってきました。そして、米国内では、草の根の保守勢力が、こうしたバイデン政権の政策を「違憲 unconstitutional」とみなし、米国を共産主義化する動きとして強く反対しています。彼らは不正選挙によって大統領となったバイデン自体に正当性がなく、コロナ後の政策も「違憲」で、このまま行けば「米国は米国で無くなる」と真剣に考えています。
欧州でも、国家権力によるワクチンパスポートなどの強制的な政策に対して、市民の反対が強まっています。フランス、そして、社会主義国キューバでも大規模な市民デモがありました。
オーウェルの『1984』はダークなSF小説で、「ビッグブラザー」はAIによる監視社会、デジタルファシズムの出現を予告しています。それは、すでに中共では現実になっています。また、『動物農園』は、ロックダウンで閉じ込められ、政府から去勢され、ワクチンを打たれ、餌を与えられる家畜のような存在に陥っていく国民の姿を描いているようです。
世界で同時多発的に「ビッグブラザー」と「動物農園」が出現し、どの国の政府が最初に実現するのか?中共が先か、米国が先か?
いずれにせよ、0.1%が99.9%を支配する専制的支配、私有財産の廃止、総体的奴隷制が現実のものとなれば、「自然権」という、生まれながらの権利が全ての人々から奪われます。ヒューマニティーの死滅、同時に、近代市民社会、資本主義の崩壊が起こります。
今、各国政府は、パンデミックをきっかけに、ディストピアに向かって国民を動かそうとしています。我々は私有財産を失い、家族を失い、信仰を失い、魂を失い、そして、人間で無くなるのでしょうか。私たちは人類破滅の崖っぷちに向かっているのではないでしょうか。
TED:オーウェリアンの世界へようこそ。
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