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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

無事に終わるか、オリンピック/パラリンピック

 東京オリンピック、始まりましたね。アスリートの皆さんにはベストを尽くしていただきたいと願っています。が、個人的には、これほど国民の健康とお金を犠牲にした平和の祭典があるのかと思います。

 ちょうど、興味深い記事(7月21日付)”The Massive Costs Behind The Olympic Games”「オリンピックの裏にある莫大な諸費用」を読みました。記事によると、2020東京オリンピックが1年延期されたことで、追加の諸費用が28億ドル(約3千億円)かかると見積もられています。東京でオリンピック開催が決まった2013年には、73億ドル(約8千億円)と見積もられた諸費用は、2019年12月には126億ドル(約1.4兆円)に激増しました。現在、日経と朝日の推計では、トータル280億ドル(約3.1兆円)かかると予想され、これまでで最もコスト高のオリンピックになっています。

 日本の名目GDPは538.6兆円(日銀2020年)ですから、約0.6%をオリンピックで使うことになります。その大半は、国民の税金でまかなわれます。もちろん、当初は、そうした諸費用をまかなえるだけの経済効果を期待していました。しかし、東京は、7月12日から8月22日まで緊急事態宣言下にあり、無観客での開催となりました。チケット収入はなく、連鎖する消費の減少も著しく、全くの逆風です。

「こんなはずではなかった、コロナさえなければ・・・」と誰もがそう思うでしょう。何しろ、うちの近所の居酒屋はどんどん店じまいしているし、ホテルや旅館もキャンセルで大泣きしています。

 2015年12月の日銀の調査レポート「2020東京オリンピックの経済効果」では、「オリンピックが我が国の経済に大いにプラスになる」と予想していました。特に、訪日外国人に寄せる期待が高く、訪日観光需要がオリンピック関連の建設投資を正当化したと言えます。下の表は民間アナリストによる試算で、主なオリンピック関連の建設投資は10兆円程度です。確かに、都内の地下鉄や駅など一部はこぎれいになりましたね。

 下のグラフは、東京オリンピック開催の経済効果(イメージ)を示しています。訪日外国人の増加、それに伴う建設需要の増加といった要因がGDPを押し上げ、内需の増加に繋がっていくというイメージです。

日銀調査統計局2015年12月レポートより

 ところが、頼みの綱の外国人はコロナで来れず、建設投資の借金だけが重くのしかかってきます。特に、ホテルなど観光業、飲食関連には大打撃です。2020年の実質GDPはコロナショックで激減、ロックダウンでサプライチェーンが分断され、成長力強化も絵に描いた餅になりました。これほどオリンピック開催が裏目にでた経済政策はないと言えるでしょう。コストに見合う利益はなく、支給金手当などの支払いは、将来国民への増税で賄われるので、私たち一人一人の負担は増えるばかりです。

 始まったばかりのオリンピック、台風や地震といった自然災害、テロなど、多くのリスクがあり、とにかく無事に終わってほしいものです。そして、9月、10月からは物価上昇が実感されるようになると見ています。内需の冷え込みがどのくらい回復できるのか?オリンピック後の難題山積です。

(7/25 17:38 数値に誤りがあったため修正)

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