グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

毛沢東主義へ回帰か?共産主義は国を滅ぼす!

中国共産党百年目の危機

 中国共産党はこの7月に創設100周年を迎えました。戦後から振り返ると、毛沢東から鄧小平の市場開放へ大きく方向転換し、その後は江沢民・胡錦濤によるテクノクラート支配の下で資本主義的な経済に切り替わり、大きな成長を遂げてきました。そして、2013年に習近平がトップに立ちました。が、この7-9月の成長率はマイナスに転じると予想され、コロナショックを起点に、統制経済、思想統制など、毛沢東時代に逆戻りするかのような様相です。

 この数日間、中国恒大集団デフォルト危機のニュースが世界を駆け巡りっています。習近平政権は、このところ、アリババやディディといった巨大IT企業のIPOを差し止め、ゲームやオンライン教育産業を規制し、芸能人の活動を監視し、マカオのカジノ産業と不動産バブルを潰しに動いています。IT長者になった起業家や華やかな芸能界など、ゴージャスなお金持ちへの抑圧を強めています。戦時中の日本のスローガン「贅沢は敵だ」を思い出します。

 また、習近平は「共同富裕」を掲げ、貧しい人々へ富を再分配しようとしています。一見するとヨサゲな政策ですが、実質的には共産党が富を独占し、中央集権的に国があらゆる経済活動を支配するという共産主義へと移行していくとみられます。恒大集団デフォルト危機は、まさに第二の文化大革命の始まりです。

ソ連崩壊から見えてくること

 共産主義はなぜ悪いのか?歴史的にはソ連の崩壊から学ぶことが大きいです。ソ連はスターリン時代の1950年代には世界第2位の経済大国にのし上がり、1960年代に黄金期を迎えました。労働者には週休二日制、住宅、教育、医療、年金などが保証されました。しかし、1988年のペレストロイカの頃には失業者が溢れ、間も無く、ソ連は崩壊しました。スターリン体制は30年ももたなかった。対外的な戦争で敗北したのではなく、国内の経済が立ち行かなくなり、内部から腐って自滅したのです。

 ソ連の経済構造は国家計画経済であり、あらゆる生産手段が国有化され、個人や民間の経済活動の自由はなく、全くの統制経済でした。国民は公務員、働いても働かなくても同じ給与。納期はない、品質管理もない工場には不良品が積まれ、出荷されても売れない。返品の山となり、市場にはモノが出回らない。ソ連は慢性的なモノ不足となりました。そして、海外からの贅沢品などは闇市(地下経済)で取引され、そこには、マフィアやヤクザがはびこり、一般市民が暴力や犯罪の犠牲になりました。

 この辺りの状況については、小室直樹氏が『ソビエト帝国の崩壊』(1980年)と『ソビエト連邦の復活』(1991年)で鋭く分析しています。小室氏は労働者のエートス(勤労意欲)についても、「上からの命令にヘコヘコ従うだけ、独創性や指導性が評価されることはなく、その結果、ソ連の労働者は奴隷根性が身にしみきって働かなくなった」と記しています。つまり、共産主義/社会主義経済ではイノベーションが起こらないのです。

致命的な電力不足

 さらに追い討ちをかけるように、中国の三分の二で広範な大規模停電が発生していると報じられています。電力不足で水を汲み上げられずに水道が止まる、夜も明かりがない、強盗がはびこるなど、まさに百鬼夜行です。ある技術者は「中国では基礎技術がなく、海外からパクって発展してきたのでいざとなると自分たちで一から修理し、立て直せない。だから悪いことは馬乗りになってやってくる」と評しています。

  電力不足は産業にとって致命的です。工場の生産が止まれば、製造業から食品加工に至るまで広範に減産になります。食糧不足から食品価格の高騰は必須です。また、金融においても電力がなくなれば、ビットコインのマイニングができないといった程度の騒ぎではなく、取引決済ができなくなるとすべての経済活動が滞ります。また、ネットも使えなくなると、この世は闇。まさに、危機は馬乗りになってやって来ています。

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