グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

それでも世界は成長し続ける 変化はチャンス

 このところニュースはウクライナ情勢一色です。欧米ロシアは賞味期限になりそうな武器弾薬を投入し、志願兵や傭兵が入り乱れた戦場は地獄の沙汰です。ウクライナでの戦火が長引き、他の地域へも拡大していくのかどうか、世界情勢は不穏です。

 ウクライナの一般市民はパンデミックよりも恐ろしい恐怖に支配されています。ウクライナに平和な日常が1日も早く戻ることを願わずには要られません。

 世界経済予測で著名なOxford Economicsによる3月のリスク調査を見ると、世界のビジネスリーダーは目下のリスクについて、第1にウクライナ危機、第2にサプライチェーンの分断とインフレ、第3に中央銀行の過剰な利上げ、第4にパンデミックといった順で認識しています。もしウクライナ危機が長引けば、今後、個人消費は落ち込み、GDP成長率はさらに落ち込みます。

 直近のOxford Economicsによる予想では、2022年のGDP予想は3.3%、2023年は3%です。仮にウクライナでの紛争が長引く場合、世界経済はどのくらい落ち込むのか?

 下のグラフでは、赤線はコロナショック前(2020年1月)を起点(100)とした成長率の推移を示しています。青線はベースラインで、2020年3月のコロナショックでは世界のGDPが大きく落ち込んだことがわかります。青点線はウクライナ危機が長期化する悲観的なシナリオです。

 また、今後の予想において、悲観的なシナリオではベースラインよりもさらに0.5%から0.7%ほど落ち込みます。グレーの影はブレ幅を示しています。最悪の場合、ベースラインから2〜3%ほど落ち込むリスクもあります。

 経済の落ち込み具合を地域的に見ると、地理的にウクライナに近い東ヨーロッパへのマイナス影響が最も大きく、欧州全体もその影響を受けます。

 Oxford Economicsはまた、「テイルリスク」が大きいと指摘しています。「テイルリスク」とは、起こる確率は非常に低いが、起こると甚大な損失を被る事態です。例えば、リーマンショックは100年に一度の金融危機ですが、経済金融に甚大な損失を与えました。

 こうしたテイルリスクとは、政治上あるいは外交上のミスで大きな戦争が起こる、コロナショックのような経済活動の遮断が世界一斉に起こる、あるいは、中央銀行の誤った金融政策で信用逼迫が起こるといった事態です。

 一方、金融市場では、グローバルな投資マネーが欧州や中国、ロシアから米国市場へ向かっています。米国の相場も年初から下げてきましたが、それでも世界の運用資金は米国市場に投資されていきます。

 このように、今、様々なリスクが顕在化しています。こうした時期は変化が大きく、人心も不安定になりがちです。しかし、世界のGDP推移を見ると、短期的に落ち込んでも長い目で見れば、成長していきます。成長の速度はその時代の国際関係や政治状況、技術革新などによって異なります。そうしたあらゆる変化を含みながら、成長は続きます。

 世界が目まぐるしく変化する今こそ、今まで見えなかったことが見えてきたりして、変化の先にある新しいチャンスの芽を掴む好機かもしれません。希望を持って頑張りましょう!

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