グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

グレート・リセットに負けない方法

 ウクライナ危機が長引いています。ウクライナは米露の代理戦争の犠牲者です。米国もロシアも大きな領土を有し、エネルギー資源、食糧も自国で賄える大国です。どうしてお互いに戦争をしなければならないのか?

 何の罪もない一般市民が生活を破壊されて難民として国外避難を余儀なくされる・・・こうした悲惨な出来事はウクライナのみならず、シリア、アフガニスタンやミャンマー、アフリカで何十年も繰り返し起こってきたことです。

 今回のウクライナ危機は局地戦ではなく、経済的損失が世界中に波及する「経済・金融戦争」です。欧米はロシアへの経済制裁を強めていますが、制裁はブーメランのように欧米にも、同盟国である日本にも、物価上昇と景気後退という「スタグフレーション」として跳ね返ってきます。加えて、新興国やアフリカの途上国は飢餓を含む広範な人道的危機に見舞われるでしょう。私は、この秋口から来年には状況が悪化すると予想します。

 国際金融面では、米国は前代未聞の財政赤字を膨らましているにもかかわらず、ドル高が続きます。欧州はロシアからの輸入に頼っていた原油や天然ガスを、米国や中東などから輸入しようとしています。次の冬が来る前にドル高で高くついても備蓄をしなければならないのです。日本も同様に、この割高のペトロダラーを支払わなければならず、欧州、日本では資源が牽引する物価高がしばらく続くと予想されます。

 戦争、インフレ、食糧難といった先行きが不安で、不穏な空気が世界に広がっています。米国株式市場では個人投資家の心理が超弱気に振れています。ボストン郊外に住む知人によると、パンデミック以降、多くの住民が裏庭で野菜作りに励み、食料自給に備え始めたそうです。「グレート・リセット」を想定しての自衛ともとれます。

 私は以前お伝えしたように、「グレート・リセット」には大反対です。

参考記事:「グレート・リセット」は文明を滅ぼす(1月27日)

 最近は日本でも陰謀論がネットで広がり、多くの人が知るところとなっています。そうした情報を売りにするオンラインメディアもあります。米国では陰謀論はずっと前からありましたし、実証研究も出版されてきました。当時は、多くの知識人が公に口にすることがなかっただけで、知る人ぞ知るといった感じでした。

 しかし、怖がっているだけでは前に進めません。米国では陰謀論、そして「グレート・リセット」を仕掛けるグループがいることを前提に、どのように市民が自分を守り、家族を守り、コミュニティを守っていけるか、真剣に議論されています。

 議論だけではなく、実際には何をすべきか?連邦政府機関とウォール街でキャリアを積んだエコノミストのキャサリン・フィッツ氏は、大きな政府からの支配を排除し、市民が今からすべき現実的な対処法を述べています。簡単にまとめると以下のようです。

  • Get rid of bad guys. 「悪い奴等」をあなたの日常から排除しよう。

例)TVや大手メディアやSNSなどを最低2時間シャットダウンし、あなたの個人情報を守ろう。そして、本当に頼りになる人たちと付き合おう。

  • Think small. 地元コミュニティーの中で、食料、マネーなど必要なものを調達しよう。そして、コミュニティーの人たちと助け合おう。

例)新鮮な地元食材を食べよう。その生産者にお金を回そう。地元の信用金庫に預金しよう。

・ 彼らの「陰謀論」に対抗するには、我々自身の「陰謀」で自分達の生活を守るのだ。

(参考)フィッツ氏のインタビュー動画 CATHERINE AUSTIN FITTS ON INFLATION(5月2日付)

 人工国家の米国には教会を中心としたタウンミーティングや自治の原理原則があります。おそらく、米国は再生のために、ファウンディング・ファーザーズたちの自治独立の精神に戻るのだろうと思います。それが米国の原点だからです。では日本は?日本には日本の原点があります。私は「日本再生への道」として、何を拠り所として日本が再生できるかについて、すでにお伝えしています。どの国にもその成り立ちとなる原点、原理原則があります。そこへ立ち戻り、再出発することが、グレート・リセットに負けない方法だと思います。

(参考)対談記事「日本再生への道 -森林里山こそが国土防衛 林徳彦氏との対談- 」

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