コロナ後の世界秩序 BRICsからTRICKsへ 日本の生きる道は?
世界はコロナ後に向かって動いています。その先には、全く新しい世界秩序が見えてきています。
コロナショックをきっかけに経済の動きが大きく変わりました。この冬に向けて、サプライチェーンの分断、エネルギー危機が世界経済を大きく揺るがすことになりそうです。
以下、ゾルタン・ポズサー氏(クレディスイスのストラテジスト)の最新リポートを日本の視点から私なりにまとめた内容をお伝えします。読者の皆様にも、世界秩序の地殻変動をお伝えし、日本を取り巻く現実を知って頂きたいからです。
(1)コロナ前(1990-2020年)
- 1989年11月にベルリンの壁が崩壊し、翌年にソ連が崩壊。米ソ冷戦が終結しました。1990年代には米国の一極覇権主義が進みました。1995年からIT革命が進行し、米国は世界経済を牽引しました。
- 欧州では統合が進みました。1991年にEU(欧州連合)が誕生し、1999年には単一通貨ユーロが導入されました。
- 2000年には中国がWTO加盟を果たし、「世界の工場」へと成長します。その過程で中国は莫大な資源需要を賄うために世界中から資源を調達します。輸入先のロシア、ブラジル、インド、南アも中国と共に新興国(BRICs)として経済成長を遂げました。
- 世界中に中国の安価な製品が流れ込みます。欧米先進国は中国の安い労働力を目掛けて、生産拠点を中国に移し、グローバルなサプライチェーンを構築しました。各国の貿易は活発になり、同時に過剰な供給と価格競争が起こりました。過酷な国際競争が価格上昇を抑え、ディスインフレが支配的でした。
- また、ロシアでは2000年にプーチン大統領が誕生し、ロシアはEUへ天然ガスを供給し、ドイツの製造業の発展を支えました。
- 総じて、グローバル化の進んだ30年間で、世界は[米+中]、[EU+ロシア]の秩序を保ち、経済成長し、新興国は豊かになりました。
(2)コロナ後
- 2020年から始まったコロナショックで、世界経済は麻痺状態となりました。コロナ禍で今起こっていることから、コロナ後の世界も見えてきたようです。ポイントは次の2点です。
- サプライチェーンの分断、グローバル化の巻き戻し
30年かけて構築されたサプライチェーンが閉ざされると、その再構築には長い時間がかかります。その間各国では、自国の利益を第一とする動きが強まり、特にライフラインに関わる食料やエネルギーについては世界で争奪戦が起こっています。
- デフレからインフレへ
2008年のリーマンショック後はFRBが大規模な量的緩和を実施し、世界でインフレは封じ込められました。しかし、ロックダウン以降、物価が上昇し、世界の中央銀行は政策金利を上げ、金融引き締めに動いています。(日銀は緩和政策を持続しています。)
- 世界秩序は、[米+EU] 対 [中国+ロシア]の対立軸に変わります。
- バイデン政権はアフガン撤退で失態を晒し、国内でも政権に対する不満が高まっています。また、ドイツはロシアからのガス供給が先細り、欧州全体はこの冬エネルギー危機のリスクに晒されています。
- 中露は、ロシアの資源と中国の工業力を持って共同でユーラシア大陸を席巻しようとしています。しかし、中国国内では不動産バブルの大崩壊で経済が混乱し、また、かつてのような安く豊富な労働力の供給はなく、少子高齢化に苦しんでいます。
- 中露にトルコ、イラン、北朝鮮を加え、TRICKsが軍事的な連携を強めています。
- 欧米と中露の対立が深まる中、その緩衝地帯(バッファーゾーン)にあるのが、ウクライナ、台湾、韓国です。ウクライナは長引く戦争状態にあります。台湾は中国と対立し、今年から2023年内には人民解放軍による台湾封鎖があると米海軍は読んでいます。また、韓国は米よりも中国寄りに傾いています。韓国では中国による経済支配が浸透した結果です。トランプ元大統領はそうした事実を踏まえ、朝鮮半島統一で米軍3万兵は韓国から撤退するはずでした。
(3)日本の生きる道は?
- 1990-2020年の「失われた30年」で日本は世界の成長から取り残され、国際的な経済力は一等国から脱落しています。経済力に裏付けられた外交力や国際的な影響力も衰えています。
- そして、平和時のBRICsから戦時のTRICKsへと世界情勢が変わる中、日本は対立軸の緩衝地帯の真っ只中にあります。
- この時期に及んで、緩衝国家に位置付けにある事実を受け止め、どのように他国の支配を受けずに生き残れるのかを真剣に考えるべきです。
- 最悪のシナリオを示しますと、例えば、中共に占領支配された場合、日本人はウィグル人のように扱われるでしょう。個人財産は没収され、神社仏閣、教会は破壊され、あらゆる資源(水・農地・電力施設など)や民間企業も国営化され、我々は奴隷として管理される。
- そうした恐怖の将来像から逆算して今何をすべきか一人一人が考えるべきです。
最後に、今週は、敢えて恐怖のシナリオを持ち出しました。日本の主要メディアは国内にフォーカスし、自分達だけの視点で集めた情報ばかりで、世界から見た俯瞰的な視点に欠けています。日本の政府や企業経営者などの見識が世界と大きくズレまくる原因となっています。当メルマガではこうした点を踏まえて今後も経済、金融、国際ニュース情報をお伝えしていきます。
コメントは締め切りました。