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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

「煩悩」と「攻撃的現実主義」

 お盆の頃、皆さま 酷暑のなかお元気にお過ごしでしょうか。

 根津美術館(東京南青山)では季節ごとの茶事を展示する特別な部屋があります。お盆の時期、2階の一番奥の室では「追善」のお茶会のしつらえが展示されています。根津嘉一郎氏が大正11年に親しかった財界人を偲んで行った茶事で披露された茶道具が並んでいます。例えば花入は経筒「大山蓮花」といったように、故人の供養のために茶道具を取り合わせ大変心のこもった茶会であったことが伺えます。

 昔の財界人は神仏を大事にしたという話はよく聞きますが、財界人同士がこのような「追善」を行った過去と比べると、21世紀の現代人は「煩悩」が深く、財界も拝金主義に流された金儲けサークルになりさがったように見えます。

 8月に入りこのところ株式相場が乱高下を繰り返し、小金稼ぎで一発当てたい経営者や個人投資家の煩悩を見抜いてか、吊り上げて乗せては落とすという煮えたぎった鉄火場のような状況になっています。13日の株式相場では提灯が並んでぶら下がり、鉄火場の投資家は自分だけは売り逃げられるとタカをくくっています。が、16日あたりから難しい状況になっていくかもしれません。こうした環境を金融では「ボラティリティが高い」と表現するのですが、商いの薄いお盆の頃と重なり、何か異常な雰囲気を感じます。

 世界も戦争したい人たちの煩悩で満ちています。バイデン政権は任期中にイスラエルとウクライナに武器を与え、戦争をやめる気配はありません。秋口にかけて米国内の景気の弱さが見えてくると、大統領選は現職の民主党政権にとって不利になります。それをカバーするためか、バイデン政権は好戦的で、主要メディアもあたかもイランやロシアがすぐにでも核戦争を起こしそうな報道をしています。果たして現実はそうなのか?

 民主党のみならず共和党エスタブリッシュメント内にも、トランプ・ヴァンスのMAGA(米国第一主義: Make America Great Again)に抵抗/対抗する勢力があります。米国内は既存の党派を超えて、グローバリズムの路線で利益共同体を築いてきた勢力と、MAGA陣営との間の戦いになっています。特に民主党極左はMAGAの草の根的愛国心とキリスト教的倫理観を根こそぎ破滅させようとしています。MAGA賛同者は米国人としての人権すら剥奪されてしまう恐怖心から一歩も引かずに戦うだろうから、両者の相違はイデオロギー闘争として過激化する兆しがあります。

 世界秩序についてはミアシャイマー博士が言われるように、米国一強の覇権体制が終わり、米・中・露に多極化するなか、国際政治のエッセンスは「攻撃的現実主義 Offensive Realism」そのものです。この種の強すぎる煩悩は仏教的な世界観を持ってしても56億年7千万年経て解決できるかどうか、甚だ疑問です。

(注)お経によると、弥勒菩薩が56億年7千万年のちに高野山奥之院に現れて衆生を救うとされている。

(参考)根津美術館

https://www.nezu-muse.or.jp

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