グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

「カマラノミックス」で米国はベネズエラになる!?そもそもの正当性から考えてみると・・・

 

 8月19日から22日までシカゴで民主党大会が開かれます。このところ大統領候補のカマラ・ハリス氏の経済政策の概要が報じられています。8月16日付ウォールストリート紙のポッドキャストを聞いていますと、ハリス氏の「カマラノミックス(Kamalanomics)」は、価格統制を含む社会主義、もしくはもっと進んだ共産主義だと評しています。

 ハリス氏の政策はざっくり言うと、労働者および低所得層に広く住宅を供給し、子供手当を手厚くし、生活に必要な食料雑貨品は誰もが買える価格に統制し、政府がさまざまな補助金を出して国民生活をサポートするというものです。国民皆保険、大学まで教育費タダといった政策も出てくるかもしれません。一見すると国民がみんな満ち足りて暮らせそうなイメージです。しかし、誰がそのコストを負担するのか?

 ハリス氏の話を聞くと、1950年代後半のソ連の様子を思い出します。スターリン時代にソ連は米国に次ぐ世界第2位の経済大国にのし上がり、1960年代に黄金期を迎えました。労働者には週休2日制、住宅、教育、医療、年金などが保証され、労働者(プロレタリアート)のユートピアと言われるほどの社会環境が整いました。しかし、理想郷は20年も続かなかった。工場には欠陥品が溢れ、物価は上昇し、労働者はパンや卵を買うのに数時間も並ばなければならない状況になっていました。「社会主義に貧乏はない」はずなのに、1988年のペレストロイカの頃には失業者が溢れ、国民経済が立ち行かなくなり、体制は内部から崩壊していったのです。

 社会学者の小室直樹氏は著書『ソビエト帝国の復活』(1991年)で、なぜソビエト経済がこんな悲惨な状況になったのか、その要因について、「スターリン・モデルが時代遅れになったこと(重化学工業が基幹産業で亡くなったこと)、QC(品質管理)の不在、新機軸イノベーション(品質改良と技術革新)に対する動機の欠如、軍事産業よりも民間産業の方がはるかに新技術発展のスピードが速くなったこと」などを挙げています。

 スターリン・モデルが目指したのは、マルクス・レーニン理論に基づく国造りだったのですが、プロレタリアート独裁のために農民の過酷な犠牲がありました(農業を犠牲に工業化が進められた)。また、ソ連は食料など生活必需品の価格を低く固定(価格統制)し、企業に赤字が出れば補助金で埋めていきました。このため1978年には「食料助成金」が軍事費よりも多くなって、しかも配給制で国民には生活必需品さえ手に入らない、経済崩壊が明らかになりました。大きくなり過ぎた社会主義政府の下、経済が全く機能しなくなりました。

 では資本主義として最も成功し、かつ世界一豊かな米国になぜこのような陳腐な経済政策が論じられるのでしょうか?歴史を振り返れば、1990年にソ連経済が崩壊し、国家体制そのものがロシアに再編成されていった経緯は誰もが知っていることです。そして、マルクス主義、スターリン・モデル、毛沢東といったあらゆる社会主義、共産主義の理論に基づく国造りは、経済を破壊し、国民を貧しく不幸に陥れてきました。歴史が証明しています。よって、カマラノミックスとは、米国を資本主義から共産主義に大転換し、ソ連のように米国経済を崩壊させる、これを目指していると考えられます。民主党極左による「グレートリセット」シナリオそのものです。

 ウォールストリート紙ポッドキャストで記者は「こんな政策を施行されたら、米国はベネズエラのようになってしまう!」と語っています。ベネズエラは石油資源豊かな国家ですが、政府がすべての企業や生産関係、資源をコントロールし、価格を統制すると、国内経済は崩壊しています。

 そしてここに来てハリス氏の登場。2020年11月の大統領選挙から振り返ってみると、「グレートリセット」を目指すバイデン政権がカマラノミックスを予行練習していたのではないかと思われる節があります。それはコロナショックとロックダウンです。コロナ禍で経済活動を止め、パンデミックの恐怖を煽り、内戦でもないのに戒厳令が敷かれ、国民を家に閉じ込めました。そして、必要な生活費を政府が直接国民に配給するという前代未聞のことが起こりました。私は、パンデミックはトランプ再選を阻むためのグローバリストによる工作だと考えていましたが、じつは、もっと大掛かりな社会実験だったと気づくようになりました。

 次に起こることは何か?さらに段階が進み、国民にはロックダウンの次は収容され、生存に必要な物だけは与えられるという「人類家畜化」が待っています。国民は一切の私有財産を持つことなく、ゆえに経済的自由を剥奪され、精神的思想的自由さえ失い、ただ生存するだけの支配者に奴隷化された存在になります。支配者とはG. オーウェルの「1984年」に出てくるような個人の魂までをも管理するビッグブラザーです。これがカマラノミックスの最終地点です。

 ところで、突如大統領候補となったハリス氏。そもそも不正選挙で大統領に就任したバイデン氏に任命されて副大統領になった経緯からして、国民から正当に選ばれた人ではない。よって、大統領選に出馬するいかなる正当性があるのか、私には不明です。さらに、大統領候補として、これまでに軍役に就いて国に奉仕したとか、目立って国民のために尽力した経歴がないのです。そして、今回も民主党あるいは民主党支持の国民から選ばれて大統領候補になったわけではない。ただ非白人で女性、マイノリティという彼女の属性だけが際立っているからか?

 民主党陣営はハリス氏を看板に立て非白人、マイノリティ、女性の票を獲得しようとしています。共和党陣営のトランプ・ヴァンスは白人、男性ですからその対極を攻め、米国を分断するつもりです。これからの選挙活動では、大統領候補同士のディベート、副大統領同士のディベートが数回行われ、国民に向けての政策アピールも増えていきます。その中で主要メディアは、米国民の信念や愛国心といった「心」をかき乱し、国民を分断させようと過激な情報を流布する、社会不安を扇動する・・・あらゆるものが武器化していくでしょう。

 そして、そこまでして民主党が勝てない場合、彼らは手段を選ばないだろうと思います。すなわち、暗殺、テロ、内戦、金融市場の崩壊、極端で極悪な手段を取ってまでもトランプ勝利を阻むかもしれません。グローバリストのシンパは民主党のみならず共和党エスタブリッシュメントにも潜んでいますから。

 では我が日本はどうなる?終戦日を前に岸田氏が退き、日本はすでにグローバリストにとって最高の成功例となっているかもしれません。敗戦、占領から80年かけて完全に骨抜きにされた日本。中共に神社仏閣を汚され潰されても抗議すらできない、共産化する米国の言いなりの政府。最悪のケースとして中国の1省になるか、米国の1州になるか、分断統治されるか?

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