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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

今度の参議院選挙について 石破君と同世代として思うこと

 石破総理と私とは同窓生です。石破さんは鳥取の実家から慶應高校に転校し、大学に進学しました。仲間の同窓生たちと以前「石破君を励ます会」を開いたりして、石破さんとはさまざまな機会に話をしたことがあります。

 つい先日仲間の同窓生が集まり、いろいろな話をしました。彼らは卒業後、当時ベストとされた大企業や官庁に就職し、各界でそれなりにキャリアを築き、今はもう一つの卒業期に入っています。会合である友人がこう言いました。「働き盛りだった過去30-35年間、我々は仕事や家庭で頑張ってきたけれど、結果日本がこんなにテイタラクになってしまった。一体何が起こってきたのか??自分たちの世代の責任を感じる。」

 おそらく多くの日本の人たちが、それなりに真面目に頑張ってきたのに、今なぜこんな状況になっているのか、何が課題で、どう解決していけばいいのか混乱し、不安に感じているのではないかと察します。おそらく石破さんもその一人で、「自民党内野党として長年真面目に役割を果たしてきたのに、今、総理になってみたらこれまでの過去の実績の何もかもが時流に合わなくなっている、目の前の諸問題にどう対処し、解決していけばいいのか困惑している」といったところでしょうか。が、そこには自民党が潰れそうな危機感もなく、まるで自分だけが異次元空間にいるようです。

 このようにあまりにも自分の意識できる世界と現実とかけ離れてしまい、チグハグなボタンのかけ違いが凄まじいと、とんでもない事態が起こります。象徴的なのがトランプ政権に対する「舐めるなよ」発言です。最悪の時に最悪のことを口走ってしまったという感じですが、一国のトップとして許されることではありません。私はこの一言で「日本の戦後レジーム」は完全に終わったと感じました。

 「戦後レジームの終焉」については、2015年に出版した共著『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』で、政治評論家の片桐勇治さんが詳しく説明しています。我々は日本の戦後が2013年4月をもって終了し、第2次安倍内閣の下で2016年からはトランプ氏が登場し新しい日米関係が模索されるところまでの移行期を見てきました。しかし、2021年1月にバイデン政権、10月に岸田政権となり、2022年7月に安倍氏が暗殺され、様相は一変しました。2024年10月に岸田から石破政権に変わりました。

 ちょうどその頃、2024年10月の大統領選挙中からトランプ氏が影響力を発揮し始めると世界の潮流は大きく変わり始めました。トランプ氏は「バイデンの引き起こした米国民にとっての負の遺産」を片付けるとし、ものすごいスピードで政策の巻き戻しを実施しています。バイデン政権に従属した岸田政権に対してもトランプ流の巻き戻し(バックラッシュ)が来ることは昨年10月には見えていたことです。それなのに内向きの自民党は最も内弁慶な石破さんを総理に選んでしまった。

 トランプ氏はリアリスト(現実主義者)で結果重視のビジネスマンですから、理屈をこねて行動しない石破さんとは波長が合わないし、おそらく通商交渉に関してもトランプ政権と赤沢さんとは話が噛み合わなかったのでしょう。「岸破政権」と揶揄されるほどバイデン寄りの石破さんに対し、信頼はなく敵対心を抱かれてもおかしくないほどです。トランプ関税の交渉失敗で政府は国民の信任も失うでしょう。

 米国からトヨタがいなくなっても米国は困りません。戦後の日本経済は、朝鮮特需やベトナム特需に助けられ苦境を脱出してきました。つまり米帝国がアジアで戦争し、日本がその後方支援をして日本経済が好景気に沸いたのです。日本の国民経済はアメリカ様のおかげもあったわけで、その事実は重く受け止めるべきです。

 もし日本が自立し強い独立国家を目指すのであれば、米国に従属してきた経済、安全保障、インテリジェンス、軍事等、全てのシステムをゼロベースで見直し、国民経済を立て直す必要があります。本来であれば政府はトランプ関税で国民を味方につけて消費税ゼロで、輸入関税を引き上げられても耐えるべきでしょう。そして、過度な官製統制経済から民需中心の国民経済へと大きく舵を切るべきです。参院選が近づく中、まずは投票に行きましょう!

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