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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

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シリア情勢とテーパリング

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 ジョージ・クルーニー主演の「シリアナ」は、 ロバート・ベア原作『CIAは何をしていた?』に基づくスリリングな映画です。「シリアナ」とは、シリアとイラン、イラクを束ねた架空の国家です。2005年の封切りですが、米国の政財界と産油国との利権の関わり、イランのテロ組織の実態などを実によく描いています。現在のシリア内戦や中東情勢の不安定化を予期させます。
 オバマ大統領は、日本時間の日曜午前2時半頃に緊急会見を行い、シリアへの軍事介入の意図を明確に示しました。米国の介入は短期的、局所的とみられますが、いったん介入すれば、ロシア・イラン・中国との代理戦争が本格化し、イスラエルのイラン核施設への攻撃、各地でイスラム過激派のテロ活動が活発化しそうです。この戦争は「アラブの春」の延長線上にあるのですが、その出口戦略は極めて難しいと思われます。
 マーケットは、リスク・オフからリスク・オンへのモードをますます強めそうです。大量破壊などのショックが起これば、一時的な世界同時株安や新興国や南欧・東欧諸国などからの資本逃避が起こる可能性があります。日本経済にとっても、円高、原油高、輸入製品の値上がりなど、あまり良い材料はありません。
 シリア情勢でテーパリングはどうなるか?戦争すればコストがかかります。限定的な介入とはいえ、国家財政が厳しいときに戦争したくないのは英仏だけではありません。その意味では、FRBが気前の良く量的緩和(QE)を続ければ、経済成長のためではなく戦費穴埋めで、ますます財政赤字を増やすことになります。
 もともとウォール街のキャピタリストたちは、量的緩和を「個人消費を膨らます目的で、民間企業の収益や信用拡大につながらず、バランスのとれた成長に貢献していない」と批判してきました。
 イラクやアフガン侵攻でかさんだ戦費は、米国人に多額の税金を課すことになりました。その痛みを感じないように、米政府は住宅価格や株価を高く維持して「富裕効果」を作り出してきました。しかし、そろそろ限界です。戦後生まれのベビーブーマーたちが大量退職にさしかかり、次の10年で定年後の生活を支えるために資産を切り売りしていく時期に来ています。
 米国初の黒人大統領は、「失敗した中東政策」の尻拭いのために、マイノリティ(これからはマジョリティを占める)のヒスパニックや黒人を戦場へ送り、かつ、彼らにも愛国心を求め、増税を説得できるでしょうか。
 シリアとテーパリングは、米国の国体に関わる大きな問題をはらんでいます。

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