TPPは新たな外圧になるか
20日は一日中、日米関係の集まりが重なった。
午前中は東京産業人倶楽部の賀詞交歓会にて、米国大使館公使マーク・ウォール氏(経済・科学担当)の講演を拝聴。環太平洋経済連携協定(TPP)について日米関係がいかに重要かを強調された。
講演の後、ある中小企業(メーカー)のオーナー社長が質問に立ち、TPPに大賛成だと主張した。草の根レベルで日米の中小企業同士が自由な協力関係を築くのがベストであり、日本政府にTPPを推進するよう米国から「外圧」をかけてほしいという。
たしかにTPPは、アンチ官僚体制への強力な外圧として機能するだろう。しかし、6月までに今の政府がTPP参加を決定できるのだろうか。
午後は「国家ビジョン研究会」の知人と共に超党派シンポジウムに参加した。本日のテーマは、国際外交・安全保障。石破茂氏、前原誠司氏、江田憲司氏がスピーカーとあって、衆議院第二議員会館の会議室は満員御礼。
各氏は30分ずつ講演されたが、切った張ったの現場力が感じられたのは、橋本内閣で北方領土問題と取り組んだ江田氏だけ。多くの民主党議員は政策当事者として身を切るような実践を積んでいない。マニフェストのような概念だけが先行してしまい、評論家同様、言葉に重みが感じられないのだ。
夕方からは、ハーバード、プリンストン、スミス・カレッジの同窓生が招かれたルース駐米大使主催の夕食会に出席した。大使自らTPPと日米関係の重要性を演説された。日本からの米国へ留学する学生数が激減しているという話題も出た。戦後築いてきた日米関係が中国に押されて薄まってしまうのはたいへん惜しい。
なぜ日本がこれほどまでに縮こまってしまうのか、その要因は日本の体質そのものに内在している。日本の組織は海外で勉強したり仕事をしてきた人材を異質なものとしてシステマティックに排除する。異質な者同士がぶつかり合うグローバル化のダイナミックな時代に、他国からの外圧を利用している場合ではない。自分自身で体質改善して進化していかなければ、日本に自律的な成長はありえない。
そう気付いた企業は、政府を頼らずにTPPを機に海外でのアライアンスやM&Aに乗り出すだろう。日本にはまだ収益の機会があると米国は見ており、そういうときに米国は決まって日米関係の重要性を持ち出す。クロスボーダーのバイアウトなど、ビジネスチャンスがある。資源、農業、再利用可能な技術、芸術など日本には宝の山がある、が、かつての浮世絵のように日本ではその価値評価が低い。