危機はまとめてやってくる!
3月10日から11日にかけて世界中であまりにも多くの出来事があった。もちろん日本の大地震も極めつけの凄い事件だが、その直前にも尋常でないことが表面に出てきていた。
まずリビア情勢。米国は単独介入せずに欧州の動きを見守る。しかし、難民問題には手をつけたくない欧州諸国はリビアに対して口火を切れないでいる。リビア以外の中東情勢は、シーア派対スンニ派の内部亀裂が表面化している。サウジアラビアやバハーレーンではイランの支援を受けるシーア派が王政打倒を訴える。イスラム教上の宗派対立が国境を越えて拡大するかもしれない。宗派対立が長引き、イランがイラクへの影響力を強めてくると中東情勢は予断を許さず、トルコのような民主的世な世俗的政府の確立は難しくなるだろう。中期的に原油価格は高止まりとなりそうだ。
またパレスチナ問題はさらに複雑化しそうだ。米国の中東への介入が薄れれば、イスラエルの孤立が大きな懸念材料となる。
欧州ではスペイン国債、ギリシャ国債のさらなる格下げを受け、危機感が高まっている。スペインをEUが救済できなければ、EUは分裂するだろう。
次に、中国ではインフレ懸念が政治不安を掻き立てる要因になりそうだ。中国はエネルギー資源を求めて北アフリカ、西アフリカに進出してきた。原油価格高騰は、石油の輸入国である中国にとっても深刻だ。現在のエネルギー価格上昇が続くとインフレ率は7%以上に跳ね上がりそうだ。1989年の天安門事件のときのように、インフレと失業は反政府運動に火をつけることになる。ジャスミン革命、ダライラマなど余震が続く。
10日付けFT紙によると、バイデン米副大統領がモルドバを訪問し、ロシアに対して法治国家への移行を要請した。これは極めて異例なニュースで、一体米ロ関係で何が起こっているのか。
米国では、著名な債券運用者ビル・グロス氏が「米国債及び関連の政府系債券の組み入れ率をゼロにする」とショッキングな発言をした。また、往年のアクティビスト、アイカーン氏が投資家へファンドをすべて返金すると云う。両者に共通するのは「QEは効き目がない」というFRB金融緩和政策に対する疑念である。
米国も、欧州も、そして中国も、日本も同時多発的に崖っぷちに立っている。日本は大地震で多大な被害を受け、さらにメルトダウン(炉心溶融)、放射能汚染など未曾有の危機に直面している。経済的には日本の財政赤字が増えることは目に見えており、日本国債格下げも視野に入ってきている。それにしても11日の不気味な円高。
この先、まだ関東でも大きな余震が続くと予想される。福島で被爆された方々への対応や県外へ脱出する数十万人にものぼる人々の受け入れ体制、食料や水の補給や医療などの整備が急がれる。本格的な危機はこれからだ。