グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

福島原発の損害額見積もりは366兆円

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 昨日夕方の大きな余震を受けて、福島原発の問題が早期に収拾するどころか、同じような問題が繰り返し起こり、一層の悪化と長期化が予想されるようになった。

 先日発表されたIMFによる日本のGDP成長率は、2010年の4%から2011年の1.4%に下げている。1995年の神戸大震災による損害がGDPの3-5%だったが、今回の東北大震災では損失額がその2倍にもおよぶという(IMF World Economic Outlook, April 2011 Page 73-74)。ただし、福島原発の危機が数カ月で収束するという前提にたっての試算である。その推定額には計画停電による損害や風評被害など広範囲におよぶ損失は含まれていない。

 じっさいの損失はどうなのか? Swissinfoでは、スイス政府の原子力安全委員会長を5年間務めたジュネーブ大学研究所長ヴァルター・ヴィルディ教授のインタビュー記事を報じている(4月5日付け)。ヴィルディ教授の主張をまとめると、

  • 福島第一原発事故の経過を研究した上で、半径40キロ圏内でも高い放射能が場所によって確認される現在、なぜ日本政府は半径30キロ圏内を、責任を回避する形の自主避難要請にしたのか理解に苦しむ。
  • つい先日半径40キロ圏内のある地点で高い濃度の放射能が観測された。正確な各地の数値が関係当局から出ないので、グリーンピースがこれを行ったのだが、(日本の当局が) 原発を持ちながらこうした測定の体制を整えていないことにはただ唖然とした。技術的には非常に単純なことだ。これは政治の姿勢の問題というか、文化の違いというか、われわれには信じられない。
  • 半径20キロ圏内の住民は避難したが、40キロの地域でも高い濃度が観測されたことから今後20キロから40キロ圏内の人々のがんにかかる可能性は高まっていく。ヨードやセシウムだけに限らず、重いために遠くまで飛散はしないが非常に危険なプルトニウムでさえ、この圏内には存在しうる。第3号機にプルトニウム・ウラン混合酸化物燃料MOXが使用されているからだ。
  • 放射能の、特にヨード131とセシウム137が近海の魚貝類の中に蓄積されていく。中でも重いセシウムがたまっていく。恐らく福島第一原発近海では今後40-50年は漁業ができないだろう。今後数週間は高濃度の放射能が排出されるだろう。従って信頼できる測定システムを使い、正しい情報を半径40キロ圏やそれ以上の放射能濃度の高い地域の人々に知らせ、避難させることが緊急課題だ。
  • 今回福島原発事故の損害額の見積もりは4兆スイスフランSF( 約366兆円 ) 。同じことがスイスで起これば、電力会社が避難した人などへの補償金として保険から1.8億SF(約165億円) を払い、差額は政府が受け持つ。日本では、恐らく東京電力は支払えないだろうから政府の負担になるのだろうが、それが巨額なため自主避難要請にしたのではないかと推測する。避難しようとしまいとそれは個人の責任だということだ。

 半径40キロ圏内の被害総額も含め366兆円とは!国民のタンス預金やゆうちょやかんぽに積み立てたお金をはたいても足りるかどうか。しかも、日本政府は自分たちの都合のよいように個人に責任を押し付け、自らの怠慢さ、無責任を棚に上げて福島の犠牲者に押しつけてお金を払わないつもりなのだ。

 「想定外だった」という津波や福島原発に関するコメントを聴くたびに、危機管理がなかったという政府・官僚・電力会社の状況が見えてくる。金融でも危機は繰り返し起こっている。1%にも満たない確率で起こりうる危機は、起これば大災害になる。それに備え、損失を最小限に抑える措置こそが危機管理であり、平時にあらゆる状況設定のシミュレーションを重ね、想定外の事態・最悪の事態が起きた時に取るべき行動とバックアップ体制を整備しておくのがプロの仕事ではないか。

 3・11から私たちは「チガウ日本」を見ている。東電を頂点とした政・官・財の日本のメインストリームの支配構造が音を立てて壊れていく日本である。日本のグローバル企業が本社を日本にとどめ、能力のある日本人が日本にとどまれば、日本復興は期待できる。企業は人がすべて、国はひとりひとりの国民がすべてである。

大井幸子講演セミナー

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