グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

すぐそこにある日本の危機

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 7月半ばに河村たかし氏の講演を聞いた。なかなかよかったにゃー。面白かったのは以下二点である。

1.本来、政治とはボランタリーに行うものだ。欧米の地方政治ではボランティアがふつう。市民としての名誉なのだ。一方、日本では、政治家、議員は世界レベルで異常なほど給与が高い。戦後、議員を増やすために公務員給与の中で最も高くし、年金などの福利厚生も充実させたため、議員であることは既得権益としての職業となった。その利権と特権は地盤で固められ、二世、三世の議員を生み出す特殊な家業となりさがった。

 ちなみに名古屋市長の年収は2,400万円だった(この発言に、セミナー聴衆の大半を占める中小企業経営者たちはいっせいに「えーっ!」て感じだった。)河村氏は市長としての自らの給与を800万円に下げたそうだ。

 現在、国の将来や政治のビジョンを考えて行動している議員や官僚はほとんどいないという。

 2.政治をよくしてほしいという人は多い。だが、政治改革しろといっても、議員や官僚は聞く耳をもたない。少しでも減税し、国民の負担を減らしなさい、といったほうが効果がある。

 企業はお客様によい商品を少しでも安く提供しようと努力を重ねている。そんな企業の社長に「組織改革しろ」といっても、「余計なお世話」と言われてしまう。それよりも「この商品を1円でも安くしろ」と具体的にいえば、顧客を失いたくないからコスト削減など経営努力をするだろう。政治についても同じである。(このあたりのたたみかけは聴衆に説得力があった。)

  小さい政府や減税に私は基本的に賛成である。河村氏の実行力やエネルギーはすばらしいし、改革には彼のような勢いのあるリーダーが必要だ。彼のビジョンは名古屋市や地方政治において有効と思われる。

 だが、国家、国益のレベルになると安全保障、外交、そして産業政策において、国としての競争力をいかに維持するか、せめて日本を先進国の仲間として世界に認めてもらうにはどうしたらよいか、さらなるビジョンが必要であろう。

 私は日本の将来に大きな危機感を持っている。日本の成長性を世界のだれもが信じなくなったとき、日本の信用が下がり、同時に企業の調達コストも上昇する。それを待たずとも、日本を支えてきた製造業はまもなく大挙して海外に移転する。国内よりも需要が伸びる海外で世界と闘わなければ企業は存続できない。グローバル化に対応するには日本にだけ工場を置いていたら根本的なやり方を変えられない。

 世界の競争構造に追いついていくには、日本のこれまでのお家芸だけでは十分ではない。下請け制度やサプライチェーン・システムも見直さなければなるまい。

 今、政治家も官僚も本気で国益のために働いていない。自分の利権を守るだけの人々はあてにもできない。せめて日本企業だけでもグローバル化の中で生き残り、世界で日本人の意地を見せてほしい。危機は足元に迫っている。

 

 

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