グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

テクニカル要因からみた市場動向

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  ここ3カ月のグローバルな資金フローをみると、大きく、1.欧州からの資金流出、2.米国債への資金流入、3.日本株への資金流入 といったトレンドが読み取れる。

  欧州に関しては、ギリシャ国債デフォルトの危機以来、スペイン、イタリア、ポルトガルなどソブリン・リスクの高まりに加え、ギリシャ救済に貢献したドイツの国債やユーロからの逃避が見られる。

  ユーロの投資家の資金は米国債に流入している。米国債については、ニュースでも報道されているように、財政赤字削減をめぐりオバマ大統領と議会が対立し、最悪の場合、米国債が債務不履行(デフォルト)に陥る可能性もあり、金融市場では緊張が高まっている。

  グローバル投資家はこれをチャンスととらえ米国債を買っている。マーケットは、オバマ大統領も議会も債務上限を引き上げる交渉の中で、どこかで妥協点を見いだせると読んでいる。また、想定外の米国債デフォルトといっても米国の回収率は100%で、ギリシャやアルゼンチンのように利払いもできないというわけではない。

  問題は、米国の政治リスクである。ティーパーティのような草の根のファンダメンタリストはオバマ大統領が増税を行えば、大統領を憲法違反として弾劾する覚悟がある。米国では建国の精神に基づき、勝手に増税するような独裁者を作らないよう、大統領の権限にも歯止めをかけている。こうした原則からして、財政赤字削減交渉が決裂すれば、オバマ氏が大統領であることの正統性を覆す政治闘争に発展するだろう。この場合、デフォルトはテクニカルなレベルにとどまり、マーケットは案外冷静に対処すると思われる。

  米国株については資金流出が続いているのもかかわらず、株価は上昇している。理由はおそらく、財政赤字削減交渉の後でFRBは再度の金融緩和(QE3)を実施し、金利を低く誘導したままにおくだろうという期待感からだ。

  円ドル相場が77円と円高が進んでいる。円と日本株への資金流入はこの四半期間続いている。震災からの復興需要への期待などもあるが、むしろ資金流入が株価を押し上げるといったテクニカルな要素が強い。

  実態としては、これ以上の円高が続けば日本の輸出産業は体力がもたない。特に日本の企業の90%以上を占める中小企業が本格的に海外に進出すれば、日本の空洞化が加速する。

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