忍び寄る米国株バブル
2008年のリーマンショックで、米国の一般の生活者は大きなツケを払うはめになった。住宅バブルが破綻し、米国の家計は、住宅ローンという借金と持ち家価格や株価の下落によって資産が目減りするというダブルパンチをくらったのだ。
リーマンショックから4年がたち、米国の家計は借金付けから少し立ち直っている。マイルストン・アセットマネジメントの7月のレポートによれば、家計の負債と可処分所得との関係をみると、負債残高は減りつつある。米国人は経済危機で消費を控え、借金返済にまわしていった。負債残高の可処分所得比は、2007年で131.25%とピークをつけ、2012年第一四半期には110%台を割り込んだ。
同リポートによれば、米国株(S&P500指数)は過去3年間で48.17%上昇している。住宅価格が下落し、株価が上昇したことで、不動産よりも株式が金融資産に占める比率が上がっている。株価が「富裕効果」に与える影響が一段と大きくなっている。また、米国では家計による株式保有額が増加すると株価を押し上げる傾向がある。
さらに、ガソリン価格が下がる局面では、米国の家計では可処分所得が増え、消費を押し上げ、株価も上昇しやすい。住宅バブルの後、米国では密やかに株式バブルが醸造されてきたのではないか。
今、スマート・フォン、フェイスブックの登場で米国のコミュニケーションやマーケティングの在り方、メディアなどソフト領域で大きな変動が起こっている。また、シェールガスといった新たな資源エネルギーの発見、技術革新で米国の産業構造は変わりつつある。
米国経済はソフトパッチの状況が長く続いており、相場も完全に二番底を打ったわけではなく、ぐずぐずしている。その裏では技術革新が業界再編を引き起こしつつある。この期間は、かつてのIT革命の夜明け前のときのように、企業買収やコストカットで雇用不安が続く可能性がある。しかし、いったんパラダイムシフトが起こり、方向性が定まり景気が右上がりに動き出す時、雇用は一気に改善される。このときには既に、次なる株式バブルが進行している。